不動産売却後の「確定申告書」売主が記入する時のポイント

QUICK ANSWER ─ この記事が答える問い

不動産を売った後の確定申告書は、何をどの順番で書けばよいですか?

使う書類は、申告書第一表・第二表、申告書第三表(分離課税用)、譲渡所得の内訳書の3種類です。国税庁の手引きでは、まず内訳書で譲渡所得金額を計算し、その結果を第三表の分離課税の欄に移し、最後に第一表で税金を計算する流れが示されています。間違えやすいのは、取得の日(原則は引渡しを受けた日)、買主から受け取った固定資産税の精算金(収入金額に含める)、事業用建物の償却費の累積額です。記入前に税理士に数字を確認してもらうと安心です。

決済が終わり、物件を引き渡してほっとしたのもつかの間、翌年の春には確定申告が待っています。毎年の申告に慣れている売主でも、不動産を売った年の申告は勝手が違います。いつもの書類に加えて、分離課税用の第三表と、譲渡所得の内訳書を作る必要があるためです。

しかも事業用不動産の売主は、同じ年に賃料収入の申告もあわせて行うことが多く、どの数字をどこに書くのか混乱しがちです。記入の順番と、間違えやすい欄を先に知っておけば、作業はぐっと楽になります。

この記事では、国税庁の「譲渡所得の申告のしかた」と「譲渡所得申告のチェックシート」をもとに、売主が確定申告書を記入するときのポイントを整理します。個別の数字の判断は、税理士にご確認いただく前提でお読みください。

使う書類は3種類、書く順番は「内訳書から」

ポイントは4個:

  • 申告書第一表・第二表、第三表(分離課税用)、譲渡所得の内訳書を使う
  • 内訳書は契約ごとに1枚ずつ作る
  • 内訳書で計算した結果を第三表に移し、最後に第一表で税金を計算する
  • 令和7年分の受付期間は令和8年2月16日から3月16日までだった

国税庁の手引きによると、土地や建物を売ったときの譲渡所得は、「申告書第一表、第二表」と「申告書第三表(分離課税用)」で申告し、あわせて「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】」を作成します。内訳書は契約ごとに1枚ずつ使い、申告書とともに提出するとされています(出典:国税庁「令和7年分 譲渡所得の申告のしかた(土地や建物をお売りになった場合)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/O/O1.pdf/2026年10月時点)。

同じ手引きでは、記載の流れがおおむね次の順番で示されています。最初に内訳書を作り、そこで出した数字を申告書に移していくという順番です。いきなり第一表から書き始めると、数字が決まらないまま手が止まってしまいます。

順番 書くもの
1 譲渡所得の内訳書などの明細書を作成する
2 第一表の「収入金額等」を書く
3 第二表を作成する
4 第一表の「所得金額等」を書く
5 第三表の分離課税に関する箇所を書く
6 第三表の「税金の計算」を書く
7 第一表の「税金の計算」を書く

提出の時期は、売った年の翌年です。国税庁によると、令和7年分の確定申告書の受付期間は令和8年2月16日(月)から同年3月16日(月)まで、所得税及び復興特別所得税の納期限は令和8年3月16日(月)でした(出典:国税庁「所得税及び復興特別所得税の確定申告書は、スマホとマイナンバーカードを利用したe-Taxでの申告、キャッシュレス納付が便利です!」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/campaign/r8/Feb/01.htm/2026年10月時点)。令和8年中に売った場合の日程は、国税庁の発表を確認してください。手書きでもe-Taxでも、記入の考え方は同じです。不安があれば、早めに税理士に作成を依頼しておくと期限直前に慌てずに済みます。

内訳書2面 ─ 売った物件と「譲渡価額」を書く

ポイントは3個:

  • 2面には所在地、種類、譲渡先、譲渡価額、契約日、引き渡した日、持分などを書く
  • 買主から受け取った固定資産税の精算金は、収入金額に含める
  • 実測などで代金を精算した場合は、精算後の金額で書く

国税庁の手引きでは、内訳書の1面に氏名や住所などの基本情報、2面に譲渡した土地・建物の所在地、種類、譲渡先、譲渡価額、売買契約日、引き渡した日、持分などを書く構成が示されています(出典:国税庁「令和7年分 譲渡所得の申告のしかた」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/O/O1.pdf/2026年10月時点)。手元に売買契約書と決済時の精算書を置いて書くのが基本です。

譲渡価額は「契約書の代金」だけではない

売主が特に間違えやすいのが、譲渡価額の欄です。国税庁の「譲渡所得申告のチェックシート」は、不動産売買の際に、未経過期間に対応する固定資産税相当額として買主から受領する金銭は、収入金額に算入するとしています。また、実測の結果などにより代金を精算した場合は、精算後の金額で申告することを確認項目としています(出典:国税庁「譲渡所得申告のチェックシート(令和7年分用)」 https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/topics/check/r07/pdf/03.pdf/2026年10月時点)。

決済日には、固定資産税や管理費等の精算、敷金の引継ぎなど、代金以外のお金も動きます。精算書のどの項目を譲渡価額に含め、どの項目を別の所得として扱うかは、取引の内容によって変わります。精算書を税理士に渡して、項目ごとに確認してもらうのが確実です。精算の根拠になる契約書の条項の読み方に迷う場合は、弁護士に確認してもらうこともできます。

共有で持っていた物件を売った場合は、持分の欄にも注意が必要です。手引きでは共有の土地を売った事例が記載例として示されていますので、共有者それぞれの持分に応じて書くことを前提に、記載例を確認してください。共有者の間で代金の分け方に取り決めがある場合は、その内容を弁護士にも確認しておくと安心です。

内訳書3面 ─ 取得費と譲渡費用で間違えやすい点

ポイントは4個:

  • 取得の日は、原則として引渡しを受けた日
  • 相続や贈与で取得した物件は、前の所有者が取得した日で判定する
  • 事業用・貸付用の建物は、必要経費に算入された償却費の累積額で計算する
  • 修繕費や固定資産税は譲渡費用に含めない

国税庁の手引きでは、内訳書の3面で購入(建築)代金、譲渡費用、取得費を計算し、譲渡所得金額を求める構成が示されています(出典:国税庁「令和7年分 譲渡所得の申告のしかた」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/O/O1.pdf/2026年10月時点)。ここが税額を大きく左右する面です。

取得の日と取得費

国税庁のチェックシートは、原則として資産の引渡しを受けた日が「取得の日」となり、取得に関する契約の効力発生の日を取得の日として申告した場合にはその日になるとしています。また、相続、遺贈又は贈与により取得した場合には、前所有者が取得した日で判定するとしています(出典:国税庁「譲渡所得申告のチェックシート(令和7年分用)」 https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/topics/check/r07/pdf/03.pdf/2026年10月時点)。取得の日は長期・短期の区分を決めるため、相続した物件では亡くなった方の購入時の資料を探すことが大切です。遺産分割で取得した持分の範囲に疑問がある場合は、弁護士にも確認しておきましょう。

取得費が分からない場合について、同じチェックシートは、概算取得費(譲渡価額の5%)を適用した場合は登記費用、造成費、改良費等は算入できないとしています。取得時の契約書が見つからないときに使う方法ですが、実際の取得費と比べてどちらが有利かは物件によって異なります。使う前に税理士に比較してもらってください。

事業用建物の償却費と譲渡費用

事業用不動産の売主が特に注意したいのが、建物の償却費です。チェックシートは、業務用(事業用・貸付用)の建物については、事業所得や不動産所得の計算上、必要経費に算入される償却費の累積額により計算するとしています(同上)。国税庁のタックスアンサーでも同じ考え方が示されています(出典:国税庁「No.3261 建物の取得費の計算」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3261.htm/2026年10月時点)。過去の青色申告決算書や収支内訳書の減価償却費の明細を年ごとに集め、合計額を確かめてください。

譲渡費用については、チェックシートが「修繕費や固定資産税のような資産の維持又は管理に要した費用」を譲渡費用に含めていないかを確認項目としています。国税庁は、譲渡費用は土地や建物を売るために直接かかった費用としています(出典:国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm/2026年10月時点)。仲介手数料などの領収証の写しを手元にそろえ、どれが譲渡費用に当たるかは税理士に仕分けてもらうのが確実です。

第三表 ─ 短期・長期の欄と税額の計算

ポイントは3個:

  • 第三表の「分離課税の短期・長期譲渡所得に関する事項」に移す
  • 長期・短期は、売った年の1月1日現在の所有期間で判定する
  • 特別控除を受ける場合は「特別控除額の合計額」欄の記入漏れに注意する

内訳書で譲渡所得金額が出たら、申告書第三表(分離課税用)に移します。国税庁の手引きでは、第三表に「分離課税の短期・長期譲渡所得に関する事項」の欄があり、短期譲渡と長期譲渡の区分が設けられていること、特別控除がある場合は「特別控除額の合計額」欄の記入を忘れないよう注意することが示されています(出典:国税庁「令和7年分 譲渡所得の申告のしかた」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/O/O1.pdf/2026年10月時点)。

どちらの欄に書くかは、所有期間で決まります。国税庁は、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える土地や建物は長期譲渡所得、5年以下なら短期譲渡所得としています。税率は、長期が所得税15%(住民税5%)、短期が所得税30%(住民税9%)で、令和29年分までは基準所得税額の2.1%の復興特別所得税をあわせて申告・納付するとしています(出典:国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm、「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm/2026年10月時点)。

国税庁のチェックシートでは、令和7年分の場合、令和元年12月31日以前に取得したものが長期、令和2年1月1日以後に取得したものが短期という目安が示されています(出典:国税庁「譲渡所得申告のチェックシート(令和7年分用)」 https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/topics/check/r07/pdf/03.pdf/2026年10月時点)。取得の日を引渡しの日とするか契約の効力発生の日とするかで、境目に近い物件は区分が変わり得ます。迷う場合は、記入前に税理士に確認してください。

事業用不動産の売主が見落としやすい3つの点

ポイントは3個:

  • 売った年の賃料収入は、不動産所得として別に申告する
  • 特例を使う場合は、特例ごとに定められた書類を添付する
  • 令和8年分から申告書の様式が変わり、控え(複写式)が廃止される

1つ目は、売った年の不動産所得です。テナントから賃料を受け取っていた物件では、引渡しの日までの賃料収入を、譲渡所得とは別に不動産所得として申告します。国税庁は、賃料は契約や慣習で定められた支払日に収入に計上し、敷金は預り金であって受け取った時点では収入にならないとしています(出典:国税庁「No.1376 不動産所得の収入計上時期」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1376.htm/2026年10月時点)。決済時に精算した賃料をどちらの所得に入れるかは、税理士に確認してください。

2つ目は、特例を使う場合の添付書類です。チェックシートは、特例を適用する場合は特例ごとに必要書類が別途定められているとしています。たとえば相続した不動産で取得費加算の特例を使う場合、国税庁は「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」と譲渡所得の内訳書などを添付するとしています(出典:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm/2026年10月時点)。また、チェックシートでは、売買契約書等(譲渡時と取得時に作成したもの)の写しや、取得費・譲渡費用等の領収証の写しの提出が求められています。

3つ目は、様式の変更です。国税庁の手引きでは、令和8年分から申告書の様式が変わり、控用(複写式)も廃止されるとされ、変更前の様式は使わないよう求められています(出典:国税庁「令和7年分 譲渡所得の申告のしかた」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/O/O1.pdf/2026年10月時点)。令和8年中に売った売主は、前年の申告書の控えを見ながら同じ様式で書く、という進め方ができなくなります。提出した内容の控えは自分で作成・保管しておきましょう。売買契約の内容と申告の内容にずれがあるように見える場合は、契約書の解釈について弁護士に確認しておくと、後の問い合わせにも落ち着いて対応できます。

税務・法務の確認をあわせて進めるために

確定申告書の記入は、売却で生じた数字を税務上の言葉に置き換える作業です。数字の元になるのは契約書と精算書であり、その解釈に迷う部分が残っていると、記入も止まってしまいます。申告の作業に入る前に、税務と法務の両面で数字の土台を固めておくと安心です。

税務面で税理士に確認したい主な事項は、精算書の各項目のうち譲渡価額に含めるものとそうでないもの、取得の日と長期・短期の区分、実際の取得費と概算取得費のどちらを使うか、事業用建物の償却費の累積額、譲渡費用に当たる支出の仕分け、売った年の不動産所得の計算、特例の要件と添付書類などです。

法務面で弁護士に確認したい主な事項は、売買契約書における代金や精算の定め方、引渡しの日の定め、共有者の間での代金の分け方、相続した物件の遺産分割の内容と持分、売却後に買主との間で問題が起きた場合の対応などです。

売買契約書、精算書、取得時の契約書、過去の決算書をひとまとめにして税理士に渡せば、申告書の作成を依頼するときもやり取りが短く済みます。

よくある質問

Q1. 不動産を売ったら、どの申告書を使いますか

国税庁の手引きでは、申告書第一表・第二表と申告書第三表(分離課税用)を使い、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】をあわせて作成するとされています(国税庁の手引き/2026年10月時点)。

Q2. 2つの物件を売った場合、内訳書は1枚でよいですか

国税庁の手引きでは、内訳書は契約ごとに1枚ずつ使うとされています。別々の契約で売った場合は、それぞれ作成してください。区分の判断に迷う場合は税理士にご確認ください。

Q3. 買主から受け取った固定資産税の精算金はどう書きますか

国税庁のチェックシートは、未経過期間に対応する固定資産税相当額として買主から受け取る金銭は収入金額に算入するとしています(チェックシート/2026年10月時点)。譲渡価額に含めて書くのが基本です。

Q4. 取得の日は契約日と引渡日のどちらですか

チェックシートでは、原則として引渡しを受けた日が取得の日で、契約の効力発生の日を取得の日として申告した場合にはその日になるとされています。長期・短期の境目に近い場合は、税理士にご確認ください。

Q5. 相続した物件の取得の日はいつになりますか

チェックシートでは、相続、遺贈又は贈与により取得した場合には、前所有者が取得した日で判定するとされています(チェックシート/2026年10月時点)。亡くなった方の購入時の資料を探してください。

Q6. 取得時の契約書がない場合はどう書きますか

概算取得費(譲渡価額の5%)を使う方法があり、その場合は登記費用、造成費、改良費等は算入できないとされています(チェックシート/2026年10月時点)。他の資料から実際の取得費を示せないかも含めて、税理士に相談してください。

Q7. 賃貸していた建物の償却費はどう計算しますか

業務用(事業用・貸付用)の建物は、事業所得や不動産所得の計算上、必要経費に算入される償却費の累積額により計算するとされています(No.3261/2026年10月時点)。過去の決算書の明細を集めてください。

Q8. 売る前に行った修繕の費用は差し引けますか

チェックシートは、修繕費や固定資産税のような資産の維持又は管理に要した費用を譲渡費用に含めていないかを確認項目としています(No.3255/2026年10月時点)。修繕の内容によって扱いが異なるため、税理士にご確認ください。

Q9. 申告書に添付・提出する書類は何ですか

チェックシートでは、譲渡所得の内訳書の提出が必要とされ、売買契約書等(譲渡時と取得時)の写し、取得費・譲渡費用等の領収証の写し、チェックシートの提出が求められています。特例を使う場合は、特例ごとの書類が別に必要です。

Q10. 前年の申告書の控えを見ながら書けばよいですか

国税庁の手引きでは、令和8年分から申告書の様式が変わり、控用(複写式)も廃止されるとされています(国税庁の手引き/2026年10月時点)。最新の様式と手引きを確認し、提出した内容の控えはご自身で保管してください。

まとめ

不動産を売った翌年の確定申告では、申告書第一表・第二表、第三表(分離課税用)、譲渡所得の内訳書の3種類を使います。書く順番は、まず内訳書で譲渡所得金額を計算し、それを第三表の短期・長期の欄に移し、最後に第一表で税金を計算する流れです。

間違えやすいのは、譲渡価額に含める固定資産税の精算金、原則として引渡しの日で判定する取得の日、相続した物件で前の所有者の取得日を引き継ぐ点、事業用建物の償却費の累積額、そして修繕費を譲渡費用に含めないことです。事業用不動産の売主は、同じ年の不動産所得の申告と、令和8年分からの様式変更にも注意が必要です。

売買契約書、精算書、取得時の資料、過去の決算書。この4つをそろえて税理士に相談すれば、記入の大部分は数字を移す作業になります。売却の最後の手続きを落ち着いて終えるために、決済が終わったらすぐに書類をまとめておきましょう。

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