私の不動産、今売ったらいくらになる?売主が最初に知りたい相場

QUICK ANSWER ─ この記事が答える問い

業者に聞く前に、自分で相場のあたりをつけることはできるのでしょうか。

できます。国土交通省の不動産情報ライブラリでは、実際の取引価格や成約価格、地価公示・都道府県地価調査を地図から確認でき、国税庁の路線価や毎月公表される不動産価格指数も無料で見られます。事業用不動産ではこれに加えて、賃料から逆算する視点が欠かせません。ただし公的データは目安であり、最終的な手取りは税金と費用を引いた後の金額になるため、税理士への確認も必要です。

売却を考え始めたとき、最初に浮かぶのは「いくらになるのか」です。ただ、いきなり業者に聞くのは気が引ける、という方も少なくありません。

実は、相場のあたりをつけるための材料は、かなりの部分が無料で公開されています。自分で調べておくと、後で査定額を提示されたときに、その数字が何を根拠にしているのかを読み取りやすくなります。

この記事では、国土交通省と国税庁が公開しているデータの使い分けと、事業用不動産ならではの見方を整理します。制度や数値は2026年9月時点の内容であり、個別の判断は税理士・弁護士などの専門家への相談を前提としてお読みください。

「いくらで売れるか」を3つの価格に分けて考える

ポイントは3個:
① 査定価格は「売れるであろう」と業者が判断した金額
② 売出価格は売主が決める、市場に提示する金額
③ 成約価格は実際に取引が成立した金額で、通常はここが最も低くなりやすい

相場を調べるときに混乱しがちなのは、世の中に出回っている価格が同じ種類のものではないという点です。ポータルサイトに並ぶ数字は売出価格であり、値引き交渉の前の金額です。実際にいくらで取引されたかを示す成約価格とは別のものになります。

売主として知りたいのは、最終的に手元に入る金額です。その起点になるのは成約価格であり、そこから仲介手数料などの費用と税金を引いた後が手取りになります。相場を調べる作業は、この一番奥の数字に近づくための第一歩だと考えると位置づけがはっきりします。税引後の見通しは税理士に確認しておくと、比較の軸が定まります。

無料で調べられる公的データの使い分け

ポイントは4個:
① 実際の取引価格・成約価格は不動産情報ライブラリで地図から確認できる
② 地価公示は毎年1月1日時点、都道府県地価調査は毎年7月1日時点
③ 路線価や倍率は相続税・贈与税の計算に用いられる価格
④ 市場全体の動きは不動産価格指数で把握できる
データ 性質 向いている使い方
不動産取引価格情報・成約価格情報 実際の取引にもとづく情報 近隣の単価水準を知る
地価公示・都道府県地価調査 鑑定評価にもとづく標準地等の価格 土地の水準と推移をつかむ
路線価・評価倍率 相続税・贈与税の計算に用いる価格 相続対策と併せて検討する
不動産価格指数 市場全体の動きを示す指数 売り時の判断材料にする

不動産情報ライブラリ

不動産情報ライブラリは、不動産の取引価格や地価公示等の価格情報のほか、防災情報、都市計画情報、周辺施設情報などを閲覧できる国土交通省のウェブサイトです。(出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」)地図上でエリアを指定して価格情報を表示できるため、所在地の周辺で実際にどの程度の単価で取引されているかを確認しやすくなっています。

掲載されている成約価格情報は、指定流通機構(レインズ)が保有する不動産取引価格情報を、国土交通省が個別の不動産取引が特定できないよう加工したうえで提供しているものとされています。マンション及び一戸建ての成約価格については、統計情報としての正確性に配慮した絞り込みを行ったうえで加工・提供されているとされています。(出典:同「地図表示」)個別の物件が特定できる形ではないため、あくまで水準をつかむための材料として使います。

地価公示と都道府県地価調査

地価公示は、地価公示法に基づき、国土交通省の土地鑑定委員会が標準地を選定し、2名の鑑定評価員(不動産鑑定士)の鑑定評価をもとに、毎年1月1日時点の1平方メートルあたりの正常な価格を判定して公示するものです。一般的な土地取引の指標や公共事業用地の取得価格算定の規準とされています。都道府県地価調査は、国土利用計画法施行令第9条にもとづき、都道府県知事が毎年7月1日における標準価格を判定し公表するもので、地価公示と相互に補完関係にあり、一部を共通地点とすることで半年ごとの地価動向を示しています。(出典:前掲・不動産情報ライブラリ「地図表示」)

この2つを並べて見ると、そのエリアの土地の水準が半年刻みでどう動いてきたかが分かります。ただし対象は標準地や基準地であり、自分の土地そのものの価格ではありません。形状、接道、用途地域などの条件で差が出るため、あくまで出発点として扱います。

路線価と固定資産税評価額

相続税や贈与税を計算する際、土地は路線価方式または倍率方式で評価されます。倍率方式は路線価が定められていない地域で用いられ、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。家屋は固定資産税評価額に1.0倍して評価されるため、評価額は固定資産税評価額と同じになります。路線価図および評価倍率表は国税庁ホームページで閲覧できるとされています。(出典:国税庁 タックスアンサー No.4602 土地家屋の評価)

これらは税額を計算するための価格であり、市場で売買される価格とは目的が異なります。混同しやすい部分なので、売却の相場を調べる場面と相続税を見積もる場面では、参照する数字を分けて考える必要があります。両者の関係を整理したい場合は税理士に相談すると理解が早まります。

不動産価格指数

国土交通省は、年間約30万件の不動産の取引価格情報をもとに、全国・ブロック別・都市圏別等に不動産価格の動向を指数化した「不動産価格指数」を毎月公表しています。あわせて、所有権移転登記情報をもとに、不動産の毎月の取引件数および取引面積を示す「不動産取引件数・面積」も公表されています。(出典:国土交通省「不動産価格指数」)商業用不動産については店舗、オフィス、マンション・アパート(一棟)といった区分でも公表されているため、事業用不動産の売主にとって参考になります。

事業用不動産は「賃料から逆算する」視点が要る

ポイントは3個:
① 収益物件では、年間の賃料収入と期待利回りから価格を逆算する見方が一般的
② レントロールの中身(残存期間・賃料水準・空室)が評価に影響する
③ 土地の水準と建物の状態を積み上げる見方も併せて持つ

収益から考える

区分店舗やテナントビルのように賃料が発生している不動産では、買主は投資判断として価格を見ます。そのため、年間の賃料収入を想定される利回りで割り戻して価格の目安を出すという考え方が一般的に用いられます。同じ立地でも、賃料が高く安定しているほど評価が上がりやすい傾向があります。

逆に言えば、賃料が周辺水準より低いまま長く据え置かれている場合、その状態が価格に反映されます。契約更新のタイミングや賃料改定の可否は法的な論点を含むため、売却前に条件を見直せる余地があるかどうかは弁護士に確認しておくと判断材料が増えます。

レントロールの中身が見られている

買主が見るのは合計額だけではありません。各テナントの契約残存期間、更新の履歴、滞納の有無、敷金の額、業種の安定性といった中身が、そのまま価格交渉の材料になります。空室があれば、埋まる見込みをどう見るかで提示額が変わります。売却を考え始めた段階で、契約書と入金の記録を整理しておくと説明がしやすくなります。

土地と建物を積み上げる見方

築年数の経った建物では、収益から見た金額と、土地の水準に建物の残存価値を足した金額が離れることがあります。どちらの見方をする買主が現れるかで、成約する価格帯も変わってきます。建物の状態や今後必要になる工事については、建築士や設備業者に確認しておくと、価格の説明に使える材料になります。

調べた数字を自分の物件に当てはめる

ポイントは2個:
① 単価に面積を掛けるだけでは実態と離れる
② 幅を持った数字として捉え、上限と下限を置く
  • STEP1|物件の基本情報を揃える
    登記事項証明書、公図、面積、用途地域、建築年、賃貸借契約書を手元に集めます。ここが揃わないと比較ができません。
  • STEP2|近隣の取引事例を見る
    不動産情報ライブラリで周辺の取引価格情報を確認します。用途や面積が近い事例を選ぶのがコツです。
  • STEP3|土地の水準を確認する
    最寄りの地価公示・地価調査の地点を見て、単価の水準と推移を把握します。
  • STEP4|収益から逆算する
    年間の賃料収入を整理し、経費を差し引いた後の数字を確認します。空室や滞納がある場合はその影響も見ます。
  • STEP5|幅として置く
    1つの数字に決めず、下限と上限の幅で捉えます。条件の良い買主に当たるかどうかで結果は動きます。
  • STEP6|手取りに引き直す
    仲介手数料などの費用と税金を差し引いた金額を確認します。試算は税理士に依頼すると精度が上がります。
  • 業者の査定額をどう読むか

    ポイントは3個:
    ① 価額について意見を述べるときは、根拠を明らかにする義務がある
    ② 査定額は売却を保証する金額ではない
    ③ 複数社の数字は、金額よりも算定方法を比べる

    宅地建物取引業者が媒介契約を締結するにあたり、売買すべき価額または評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないとされています(宅地建物取引業法第34条の2第2項)。(出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」)つまり、査定額を提示されたら、どの事例をどう補正して算出したのかを説明してもらうことは、売主として当然に求めてよい事柄です。

    自分で公的データを確認しておくと、この説明を検証できます。提示された数字が周辺の取引水準や地価の動きとどう対応しているのかを尋ねられれば、やり取りの質が変わります。逆に、根拠の説明を避けられる場合は、その姿勢自体が判断材料になります。

    相場から手取りまでの距離

    ポイントは3個:
    ① 仲介手数料の上限は国土交通省の告示で定められている
    ② 譲渡所得は売却額から取得費と譲渡費用を引いて計算する
    ③ 所有期間によって税率の基礎が変わる

    売買の媒介で業者が依頼者の一方から受けられる報酬の額は、売買代金を区分してそれぞれの割合を乗じた合計額以内とされ、実務では売買価額400万円超で「売買価額×3%+6万円(+消費税)」という速算式が用いられます。(出典:国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」昭和45年建設省告示第1552号)

    税金の側では、譲渡所得は売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算し、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものを長期、5年以下のものを短期として区分されます。(出典:国税庁 No.3202)税率の基礎は長期が所得税15%・住民税5%、短期が所得税30%・住民税9%で、これに復興特別所得税をあわせて申告・納付します。(出典:No.3208/No.3211)仲介手数料は譲渡費用の主なものとして挙げられています。(出典:No.3255)

    つまり、同じ成約価格でも、取得費の資料が残っているかどうか、所有期間が5年を超えているかどうかで、手元に残る金額は変わります。相場を調べて「このくらいか」と納得しても、手取りに引き直すと印象が変わることは珍しくありません。売り出す前の段階で税理士に概算を出してもらうと、価格交渉で譲れる範囲がはっきりします。

    事業用不動産では、建物部分について消費税が関わる場面もあります。土地と建物の価額をどう区分するかは契約書の記載に関わる論点でもあるため、価格の目安が固まった段階で税理士に相談し、契約条項については弁護士にも確認しておくと、後からの修正が減ります。

    【税務・法務に関する専門家相談のご案内】

    税理士(不動産税務に詳しい方)
    相場から手取りへの引き直し、取得費の資料の確認、譲渡所得と消費税の見通し、相続を見据える場合の評価との関係整理など。相場を調べた直後に一度試算しておくと、その後の判断が早くなります。

    弁護士(不動産取引に詳しい方)
    賃貸借契約の条件見直しの可否、テナントとの合意形成、媒介契約や売買契約の条項確認など。賃料条件は価格に直結するため、法的な整理が価格の話につながります。

    建築士
    建物の現況把握、現行法令への適合状況の確認、修繕が必要な範囲の整理など。第三者の見立てがあると、価格の根拠を説明しやすくなります。

    設備業者
    設備の劣化状況の確認と更新費用の概算など。買主から指摘を受ける前に把握しておくと交渉で余裕が生まれます。

    よくある質問(FAQ)

    ポイントは2個:
    ① 公的データは水準を知るためのもので、個別の価格そのものではない
    ② 数字を見たら、最後は手取りに引き直して考える
    Q1. 自分で相場を調べる意味はありますか。
    査定額が提示されたときに、その根拠を検証しやすくなります。業者は価額について意見を述べる際に根拠を明らかにする必要があるため、こちらに材料があるほど説明を求めやすくなります。
    Q2. ポータルサイトの価格を参考にしてよいですか。
    掲載されているのは売出価格で、成約価格とは別のものです。市場に出ている水準を知る材料にはなりますが、実際に成立した金額として読むと差が出ます。
    Q3. 路線価から売却価格を計算できますか。
    路線価は相続税や贈与税の計算に用いる価格で、市場価格とは目的が異なります。参考にはなりますが、そのまま売却価格として扱うことは適切ではありません。
    Q4. 地価公示と地価調査はどう違いますか。
    地価公示は国土交通省の土地鑑定委員会が毎年1月1日時点の価格を公示するもの、地価調査は都道府県知事が毎年7月1日時点の標準価格を公表するものです。相互に補完関係にあるとされています。
    Q5. 近くに取引事例が見つかりません。
    範囲を広げる、用途や面積の条件を緩める、地価公示の地点を手がかりにするといった方法があります。事業用では収益から逆算する見方も併用します。
    Q6. 賃料が相場より低いと不利になりますか。
    収益から価格を見る買主にとっては影響します。条件の見直しが可能かどうかは契約内容によるため、弁護士に確認したうえで検討してください。
    Q7. 空室のまま売るのと埋めてから売るのはどちらがよいですか。
    埋めるまでの期間と費用、想定される賃料の水準によって結果が変わります。手取りベースで比較したうえで判断するのが現実的です。
    Q8. 査定を複数社に依頼したほうがよいですか。
    比較の材料は増えますが、見るべきは金額よりも算定方法です。どの事例を使い、どう補正したかを聞き比べると違いが見えてきます。
    Q9. 市場の動きはどこで確認できますか。
    国土交通省が毎月公表している不動産価格指数があります。商業用不動産は店舗やオフィスといった区分でも公表されているため、事業用の売主にとって参考になります。
    Q10. 相場が分かったら次は何をすればよいですか。
    手取りに引き直す作業です。仲介手数料などの費用と税金を差し引いた金額を税理士に試算してもらうと、売り出す価格の下限を決めやすくなります。

    まとめ

    ポイントは3個:
    ① 相場を調べる材料の多くは無料で公開されている
    ② 事業用では、土地の水準と収益からの逆算を併せて見る
    ③ 最後は手取りに引き直して初めて判断材料になる

    「いくらで売れるか」は、誰かに教えてもらうしかない情報ではありません。不動産情報ライブラリで周辺の取引を見て、地価公示で土地の水準を押さえ、不動産価格指数で市場の向きを確認する。ここまでは自宅のパソコンでできます。

    そのうえで、事業用不動産なら賃料から逆算する視点を加えます。レントロールの中身が価格を動かすため、契約書の整理は相場を調べる作業と同じくらい重要です。

    最後に忘れたくないのが、相場と手取りは別物だという点です。費用と税金を引いた後の金額を税理士に出してもらい、賃貸借の条件に手を入れる余地があるかを弁護士に確認する。この二つを済ませてから業者と話を始めると、提示される数字の意味が読み取りやすくなります。

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