不動産を売却した売主にかかる税金|全体像を1本でわかる完全ガイド

QUICK ANSWER ─ この記事が答える問い

不動産を売った売主には、どのような税金が、どのタイミングでかかるのでしょうか。

中心になるのは譲渡所得に対する所得税・復興特別所得税・住民税で、課税対象は売却額そのものではなく、売却額から取得費と譲渡費用を差し引いた金額です。これに加えて契約書の印紙税があり、事業用の建物であれば消費税が関わる場面もあります。税率は所有期間で変わり、適用できる特例も複数あるため、条件を固める前に税理士へ試算を依頼しておくことが目安となります。

不動産を売ると決めたとき、最初に気になるのは「いくらで売れるか」です。ただし手元に残る金額は、そこから費用と税金を引いた後の数字になります。売却の検討を始めた段階で税の全体像を把握しておくと、価格交渉の下限や引渡し時期の判断がしやすくなります。

売主にかかる税金は一つではありません。譲渡所得に対する税、契約書に貼る印紙税、事業用資産であれば消費税、抵当権の抹消に伴う登録免許税と、性質の異なるものが同時に発生します。それぞれ課税のタイミングも納付先も異なります。

この記事では、国税庁が公開している一次情報をもとに、売主側の税金を一通り整理します。制度や数値は2026年9月時点で確認できる内容であり、個別の判断は税理士・弁護士などの専門家への相談を前提としてお読みください。

売主にかかる税金の全体像

ポイントは3個:
① 中心は譲渡所得に対する所得税・復興特別所得税・住民税
② 契約書の印紙税は契約時、譲渡所得の申告は原則として翌年
③ 事業用の建物では消費税が関わる場面がある
税金の種類 かかる対象 主なタイミング
所得税・復興特別所得税・住民税 譲渡所得(売却益) 譲渡した年の翌年の確定申告
印紙税 売買契約書、受取書 契約書・受取書の作成時
消費税 事業用建物の譲渡など 引渡しのあった課税期間
登録免許税 抵当権抹消登記など 登記の申請時

(登録免許税の考え方は国税庁 No.7190 登録免許税のあらまし/No.7191 登録免許税の税額表をご確認ください。2026年9月時点の情報です。)

「売れた金額」に課税されるわけではない

土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、他の所得と分離して計算することとされており、譲渡所得の金額は売った金額(収入金額)から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。(出典:国税庁 タックスアンサー No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税))差し引いた結果がマイナスであれば、譲渡所得としての課税は生じません。まずはこの構造を押さえておくと、後の話が整理しやすくなります。金額の当てはめは個別性が高いため、税理士の関与を前提に進めることをおすすめします。

税金以外にも、仲介手数料、抵当権抹消の司法書士報酬、測量費、残置物の処分費など、売却に伴う支出は複数あります。税金だけを見て手取りを計算すると差が出やすいため、支出全体を一覧にしたうえで、そのうち譲渡費用として扱えるものはどれかを税理士と確認する進め方が現実的です。

譲渡所得の計算式を分解する

ポイントは3個:
① 譲渡所得 = 収入金額 −(取得費+譲渡費用)−特別控除
② 取得費が分からないときは売った金額の5%相当額を使うことができる
③ 譲渡費用は「売るために直接かかった費用」に限られる

取得費の考え方

取得費は、売った土地や建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などに、その後支出した改良費や設備費を加えた合計額とされています。建物については、購入代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた額になります。(出典:国税庁 No.3252 取得費となるもの/No.3261 建物の取得費の計算)

買い入れた時期が古いなどの理由で取得費が分からない場合には、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができるとされています。実際の取得費が売った金額の5パーセント相当額を下回る場合も同様です。(出典:国税庁 No.3258 取得費が分からないとき)取得時の資料が残っているかどうかで税額が大きく変わる傾向があるため、古い契約書や領収書は早い段階で探しておきたいところです。

なお、購入時の契約書が見つからない場合でも、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、当時の通帳、登記済権利証に挟まれた書類などから取得価額の手がかりが得られることがあります。どこまでの資料であれば実額として扱えるかは判断が分かれる部分のため、集めた資料を持って税理士に相談するところから始めると効率的です。

譲渡費用になるもの・ならないもの

譲渡費用の主なものとして、売るために支払った仲介手数料、売主が負担した印紙税、貸家を売るために借家人へ支払う立退料、土地を売るために建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額、より有利な条件で売るために既契約者へ支払った違約金、借地権を売るときの名義書換料などが挙げられています。一方、修繕費や固定資産税など資産の維持や管理のためにかかった費用は譲渡費用になりません。(出典:国税庁 No.3255 譲渡費用となるもの)

立退料や違約金が絡む場面では、支払いの根拠となる合意書の作り方が後の説明に影響します。金額と趣旨を明確にした書面を残す点については弁護士に、費用としての取扱いについては税理士に、それぞれ確認しておくと整理しやすくなります。

税率は所有期間で変わる

ポイントは3個:
① 区分の基準日は「譲渡した年の1月1日」
② 長期は所得税15%・住民税5%、短期は所得税30%・住民税9%が基礎
③ 所得税には復興特別所得税が上乗せされる

土地建物等の譲渡所得は、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものを長期譲渡所得、5年以下のものを短期譲渡所得として区分されます。(出典:前掲・国税庁 No.3202)税額はそれぞれ次の考え方で計算し、所得税額には復興特別所得税をあわせて申告・納付することとされています。

区分 所有期間(1月1日時点) 税率の基礎
長期譲渡所得 5年超 所得税15%・住民税5%
短期譲渡所得 5年以下 所得税30%・住民税9%

(出典:国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算/No.3211 短期譲渡所得の税額の計算)

数え方でつまずきやすい点

基準は取得日から譲渡日までの実日数ではなく、譲渡した年の1月1日時点での所有期間です。そのため、取得から5年をわずかに過ぎたタイミングでも、年明けまで引渡しを待つかどうかで区分が変わることがあります。引渡し時期の設定は交渉事項でもあるため、税理士に確認したうえで買主と調整する流れが目安となります。なお、相続や贈与で取得した資産の取得の時期には別の定めがあります(国税庁 No.3270)。相続財産の権利関係が確定していない場合は、遺産分割の進め方について弁護士にも相談しておくと手戻りが減ります。

事業用不動産ならではの論点

ポイントは3個:
① 事業用建物の譲渡は消費税の課税対象となり得るが、土地の譲渡は非課税
② 建物の取得費は減価償却費相当額を差し引いた後の金額になる
③ 買換えを予定する場合、課税の繰延べができる特例がある

消費税の扱い

消費税の課税対象は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等のうち非課税取引以外のものとされ、事業に使用していた建物や店舗賃貸用の建物を売却した場合も課税の対象になるとされています。(出典:国税庁 No.3240 個人が事業用建物等を譲渡した場合の消費税)一方、土地の譲渡および貸付けは非課税取引とされています。(出典:国税庁 No.6201 非課税となる取引)

土地と建物を一括で売る場合、契約書で価額をどう区分するかが消費税額に影響します。また、課税資産の譲渡等の時期は原則として引渡しがあった時とされているため、手付金を受け取った時点で課税されるわけではありません。(出典:国税庁 No.6165 前受金や前払金などがあるとき)納税義務の有無や区分方法の妥当性は個別性が高いため、契約書の文言を確定させる前に税理士へ相談しておくことが目安です。

減価償却と取得費の関係

建物の取得費は、購入代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた額になります。計算の方法は、その建物を業務のために使っていたかどうかで異なる取扱いが定められています。(出典:国税庁 No.3261 建物の取得費の計算)長く賃貸してきた建物ほど取得費が小さくなり、その分だけ譲渡所得が大きく出やすい傾向があります。帳簿上の未償却残高と税務上の取得費が一致するとは限らないため、過年度の申告書と突き合わせる作業を税理士に依頼しておくと安心です。

なお、売主が法人の場合は、個人のように譲渡所得として分離して計算するのではなく、法人の所得の一部として扱われます。同じ物件でも、個人所有か法人所有かで検討すべき論点が変わってくるため、所有形態を前提に整理したうえで税理士に相談する流れが目安です。また、収入金額に含める金額の範囲については国税庁が別に整理しています(No.3214 土地建物を売ったときの収入金額に含める金額)。

事業用資産の買換えの特例

事業の用に供している特定の地域内の土地建物等を譲渡し、一定期間内に特定の買換資産を取得して取得の日から1年以内に事業の用に供したときは、一定の要件のもと、譲渡益の一部に対する課税を将来に繰り延べることができるとされています。非課税になるわけではない点に注意が必要です。この特例の適用を受けた場合、原則として売却した金額に20パーセントの割合を乗じた金額を収入金額として譲渡所得を計算します。(出典:国税庁 No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例)

要件は細かく定められており、買換資産が土地等であるときはその面積が譲渡した土地等の面積の5倍以内であること、買換資産を取得した日から1年以内に事業の用に供すること、届出書の提出などの手続きが期限内に行われていることなどが挙げられています。買い換えた資産の取得費は譲渡資産の取得価額を引き継ぐため、将来の売却時の計算にも影響します。適用の可否と手続きの期限管理は税理士と早い段階で共有しておきたい部分です。

検討しうる特例の一覧

ポイントは2個:
① 特例は併用できないものが多く、どれを選ぶかで結果が変わる
② いずれも確定申告と添付書類の提出が前提になる
特例 概要
居住用財産の3,000万円特別控除 マイホームを売ったときは所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる(No.3302)
空き家に係る特別控除 相続等で取得した被相続人居住用家屋等を令和9年12月31日までに売り、要件に当てはまるときは最高3,000万円まで控除(相続人が3人以上の場合は2,000万円)(No.3306)
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 相続税額のうち一定の金額を取得費に加算できる(No.3267)
収用等の特例 公共事業のために土地建物を売ったときの特別控除等(No.3552)
特別控除の種類の整理 譲渡所得から控除できる特別控除の一覧(No.3223)
譲渡損失が生じた場合 不動産を譲渡して損失が出た場合の取扱い(No.3203)

いずれの特例にも細かな要件があり、他の特例との併用が制限されている場合もあります。どれを選ぶかで税額が変わり得るため、複数のパターンで比較したうえで判断する進め方が現実的です。比較の作業は税理士に依頼するのが確実で、相続が絡む場合は権利関係の整理について弁護士の関与も検討したい場面です。

印紙税と、その他にかかるもの

ポイントは3個:
① 不動産の譲渡に関する契約書には印紙税の軽減措置がある
② 手付金などの受取書も印紙税の対象になり得る
③ 抵当権の抹消登記には登録免許税がかかる

平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される不動産の譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超えるものについては、印紙税の軽減措置の対象とされています。(出典:国税庁 No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置)

また、金銭の受取書のうち売上代金に係るものには手付けが含まれるとされ、記載された受取金額が5万円未満のものや、営業に関しない金銭の受取書は非課税とされています。(出典:国税庁 No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書/No.7125 営業に関しない受取書)契約書を何通作成して誰が保管するかによっても負担が変わるため、契約の設計段階で税理士に確認しておくと無駄が出にくくなります。

申告と納税までの流れ

ポイントは2個:
① 確定申告は原則としてその年の翌年2月16日から3月15日まで
② 特例の適用には添付書類が必要で、準備に時間がかかることがある
  • STEP1|売却前に試算する
    取得費の資料を探し、概算の税額を出しておきます。手取り額の見通しがあると価格交渉の下限が決まります。
  • STEP2|引渡し時期を検討する
    所有期間の区分や申告年度に影響します。年末年始をまたぐ設計では特に確認が必要です。
  • STEP3|契約書の記載を確認する
    土地と建物の価額区分、消費税の表示、印紙の負担方法を確認します。条項の意味は弁護士にも確認しておくと安心です。
  • STEP4|決済・引渡しの書類を保管する
    売買契約書、精算書、仲介手数料の領収書などは申告で使います。原本をまとめて保管します。
  • STEP5|特例の添付書類を集める
    市区町村長の確認書や登記事項証明書など、取得に日数を要する書類があります。早めの着手が目安です。
  • STEP6|翌年に確定申告を行う
    所得税の確定申告は原則としてその年の翌年2月16日から3月15日までとされています(国税庁 No.2020 確定申告)。住民税は申告内容に基づいて課税されます。
  • 【税務・法務に関する専門家相談のご案内】

    税理士(不動産税務に詳しい方)
    売却前の手取り額の試算、取得費の認定、土地と建物の価額区分、消費税の納税義務の判定、特例の選択と比較、申告書と添付書類の作成など。特例には手続きの期限があるものもあるため、売却の検討段階からの関与が目安となります。

    弁護士(不動産取引に詳しい方)
    契約条項の妥当性、立退きや違約金に関する合意書の作成、共有や相続をめぐる権利関係の整理、契約不適合責任の範囲設定など。税務の前提となる事実関係を固める作業でもあります。

    建築士
    建物の現況把握、現行法令への適合状況の確認、取壊しを前提とする場合の検討など。取壊し費用は譲渡費用の論点にもつながります。

    設備業者
    設備の劣化状況の確認と概算費用の把握など。引渡し前の是正範囲を決める際の判断材料になります。

    よくある質問(FAQ)

    ポイントは2個:
    ① 制度で答えが決まっている論点と、事実関係で変わる論点を分ける
    ② 数字の当てはめは税理士に確認する
    Q1. 売却額の全額に税金がかかるのですか。
    譲渡所得は、売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。差引後がマイナスであれば譲渡所得としての課税は生じません。
    Q2. 昔に買った物件で購入時の資料がありません。
    取得費が分からない場合には、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができるとされています。実額で示せる資料が残っていないか、先に確認しておく価値があります。
    Q3. 所有期間5年の判定はいつを基準にしますか。
    譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるかどうかで区分されます。実際の保有日数ではない点に注意が必要です。
    Q4. 仲介手数料は差し引けますか。
    売るために支払った仲介手数料は譲渡費用の主なものとして挙げられています。領収書を保管しておいてください。
    Q5. 固定資産税の精算金や修繕費は差し引けますか。
    修繕費や固定資産税など資産の維持や管理のためにかかった費用は譲渡費用にならないとされています。個別の取扱いは税理士にご確認ください。
    Q6. 事業用の建物を売ると消費税がかかりますか。
    事業に使用していた建物や店舗賃貸用の建物の譲渡は課税の対象になるとされる一方、土地の譲渡は非課税とされています。実際の納税義務の有無は事業者としての要件などで判断されます。
    Q7. 買い換える予定がある場合、税金は先送りできますか。
    事業用資産の買換えの特例では、一定の要件のもとで譲渡益の一部に対する課税を将来に繰り延べることができるとされています。非課税ではなく繰延べである点と、届出などの手続きがある点に注意が必要です。
    Q8. 売却で損が出た場合も申告は必要ですか。
    取扱いは資産の用途や特例の適用可否によって異なります。国税庁の該当ページを確認したうえで、申告の要否は税理士にご相談ください。
    Q9. 共有名義の物件を売る場合はどうなりますか。
    持分に応じてそれぞれが申告するのが基本的な考え方です。持分や分割の合意が固まっていない場合は、まず権利関係の整理について弁護士にご相談ください。
    Q10. 申告はいつまでに行いますか。
    所得税の確定申告は、原則としてその年の翌年2月16日から3月15日までとされています。特例を使う場合は添付書類の準備に時間がかかることがあるため、年内から動き始めると余裕ができます。

    まとめ

    ポイントは3個:
    ① 課税されるのは売却額ではなく、差引後の譲渡所得
    ② 取得費の資料と所有期間の判定が、税額を大きく左右する
    ③ 特例には要件と手続きがあり、早い着手が結果につながる

    売主にかかる税金は、譲渡所得に対するものを中心に、印紙税や消費税、登録免許税が並びます。それぞれ発生する場面が違うため、契約時、引渡し時、申告時と時間軸で並べて把握しておくと見落としが減ります。

    なかでも効いてくるのは、取得費を実額で示せるかどうかと、所有期間の区分です。どちらも売却を決めた後では変えにくい要素であり、資料探しと引渡し時期の設計は早いほど選択肢が残ります。

    特例の選択は、条件の組み合わせによって結果が変わります。複数のパターンを比較する作業は税理士に、契約や権利関係の整理は弁護士に相談しながら進めることで、判断の土台が固まります。売り出す前に一度、数字の見通しを立てておくことをおすすめします。

    ── ご相談はこちら ──

    事業用不動産の売却、まずはご相談ください

    区分店舗・区分事務所・事業用区分マンション・店舗付き住宅・築古ビルなど、事業用不動産の売却をお考えの方はLINEからお気軽にご相談ください。

    LINEで相談する

    S

    SUNNY SIDE LIFE

    事業用不動産専門メディア

    事業用不動産に特化した情報メディアです。実務経験と一般的に公開されている情報をふまえ、取得・融資・運用・売却までの情報などを発信しています。

    【重要】当サイトご利用にあたっての注意事項

    ■ 情報の位置づけについて

    本サイトに掲載されている記事は、一般的な参考情報として作成・提供されています。特定の個人や法人に対する専門的助言、推奨、保証を行うものではありません。

    ■ 読者の皆様へ

    • 本サイトの情報はあくまで参考材料としてご活用ください
    • 実際の不動産取引、投資判断、契約行為等は、必ず専門家(不動産会社、税理士、弁護士等)にご相談のうえ、ご自身の責任において行ってください
    • 本サイトの情報を参考にした結果生じた損害、トラブル、法的問題等について、当サイトは一切の責任を負いません

    ※本サイトの情報に基づく判断・行動は、すべて閲覧者ご自身の責任において行われるものとします。