店舗付き住宅で3000万円特別控除は使える?売主が確認すべき条件
店舗付き住宅でも3,000万円特別控除は使えるのですか?
使える余地はありますが、対象は居住の用に使っていた部分に限られます。居住用部分が全体のおおむね90パーセント以上なら、全体を居住用として扱える取扱いがあります。ただし関門は按分だけではありません。住まなくなってからの期限、過去2年間に受けた特例の履歴、買主が誰かという条件、共有かどうか。どれか一つで止まることがあるため、売買の条件を固める前に税理士に要件を確認しておくことをおすすめします。
3,000万円という数字は、不動産の売却でもっとも大きな効果を持つ控除の一つです。店舗付き住宅の売主の方が「うちも使えるのか」と気にされるのは当然のことです。
ところがこの特例は、金額が大きいぶん要件も細かく組み立てられています。按分の話だけを押さえて安心していると、まったく別の条件で引っかかることがあります。しかも多くは、売る前に動いておけば避けられるものです。
この記事では、店舗付き住宅の売主が確認すべき条件を、国税庁の公開情報に沿って順に並べます。最終的な適用可否は税理士にご判断いただく前提で、チェックすべき箇所をお示しします。
対象は「居住の用に使っていた部分」に限られる
ポイントは3個:
- 店舗併用住宅で特例を使えるのは、自分の居住の用に使っていた部分に限られる
- 居住用部分が全体のおおむね90パーセント以上なら、全体を居住用として扱える取扱いがある
- 国税庁は家屋と敷地それぞれについて床面積を基準とする按分の算式を示している
まず前提の確認です。国税庁は、1つの家屋の中に居住用部分と店舗用部分が一緒になっている店舗併用住宅を売ったときに、3,000万円の特別控除の特例などの適用を受けることができるのは、自分の居住の用に使っていた部分に限られるとしています(出典:国税庁「No.3452 店舗併用住宅を売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3452.htm/2026年10月時点)。
そのうえで同庁は、居住の用に使っていた部分が全体のおおむね90パーセント以上であるときは、全体を居住の用に使っていたものとしてこれらの特例の適用を受けることができるという取扱いも示しています。店舗部分がごく小さい建物では、按分せずに全体で特例を使える可能性があるということです。
按分は家屋と敷地の両方で行う
同庁の算式は、家屋と敷地のそれぞれについて床面積を基準とする構成になっています。建物だけを按分して土地は全体で計算するという扱いにはなりません。土地の評価額が大きい物件では、こちらの影響のほうが大きくなります。
90パーセントという境目の近くにある建物は、共用部分の数え方で結論が動きます。玄関、階段、トイレ、倉庫をどちらに数えるか。ここは自己判断で決めず、図面を持って税理士に見てもらう価値がもっとも高い部分です。
売る資産そのものに付いている条件
ポイントは4個:
- 現在住んでいる家屋か、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る家屋が対象
- 家屋を取り壊してから敷地だけを売る場合は、取り壊しから1年以内の譲渡契約などが条件になる
- 取り壊し後に駐車場などへ転用していると対象から外れる扱いがある
- 住居が2つ以上ある場合は、主に住んでいた家屋だけが対象
国税庁は、この特例の対象となる資産として、現在住んでいる家屋、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る以前の住居、それらと一緒に売る敷地や借地権、家屋を取り壊した後の敷地、災害で滅失した家屋の敷地などを挙げています(出典:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm/2026年10月時点)。
店舗付き住宅の売主にとって重みがあるのは、この「住まなくなってから」の期限です。商売をやめて別の家に移り、建物はそのまま置いてある。そういう状態が何年も続いていると、期限を過ぎてしまっている可能性があります。
解体して土地だけ売る場合の注意
老朽化した店舗付き住宅では、解体して土地として売る選択もあります。同庁は、取り壊し後の敷地について、取り壊しから1年以内に譲渡契約を結ぶこと、その間に駐車場などへ転用していないことなどを条件として挙げています。
解体してから買主を探し始めて1年が過ぎた、あるいは空いた土地を月極駐車場として貸していた。こうした動きが条件に触れる余地があります。解体の順番と時期の設計は、着手前に税理士へ確認しておきたいところです。
過去の特例の履歴で止まることがある
ポイントは4個:
- 売った年の前年と前々年に一定の特例を受けていないことが条件になる
- 買換えや交換の特例は、売った年とその前2年間について確認される
- 売却した家屋や敷地について収用等の特別控除など他の特例を受けていないことも条件
- 住宅ローン控除との併用には制限がある
自分の過去の申告が足を引っ張ることがある、というのがこの条件です。同庁は、売った年の前年と前々年にこの特例や一定の特例(被相続人の居住用財産の特例を除く)、マイホームの譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例を受けていないことを要件として挙げています。
さらに、マイホームの買換えや交換の特例については、売った年とその前2年間に受けていないことが必要とされています。また、売却した家屋や敷地について収用等の場合の特別控除など他の特例を受けていないことも条件です。
住宅ローン控除との関係
見落としやすいのがこちらです。同庁は、住宅借入金等特別控除などとの併用に制限があるとし、入居した年の前後一定の期間にこの特例を受けた場合などには住宅ローン控除を受けられないことがある旨を示しています。
店舗付き住宅を売って、その資金で新しい住まいを買う。よくある流れですが、3,000万円控除を使うか住宅ローン控除を使うかで有利不利が変わる場面があります。どちらを選ぶかは数年にわたる話になるため、売買の時期を決める前に税理士に試算してもらう価値があります。
買主が誰かで使えなくなる
ポイントは3個:
- 親子や夫婦など特別の関係がある人への売却は対象外
- 生計を一にする親族、売却後に同居する親族、内縁関係の人なども含まれる
- 特殊な関係のある法人への譲渡も含まれる
同庁は、親子や夫婦など特別の関係がある人に売ったものは対象外とし、その範囲には生計を一にする親族、家屋を売った後にその家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれるとしています。
店舗付き住宅では、商売を引き継ぐ親族や、自分が経営する会社に建物を移すという発想が出やすい場面です。身内に売れば手続きが楽だという判断が、結果として大きな控除を失わせることがあります。
売った後にその家屋で同居する親族も含まれるという点も要注意です。形式上は第三者に見えても、実質で判定される構造になっています。売却先の候補が親族や自社に及ぶ場合は、契約を進める前に税理士へ、株主構成や親族関係の整理が必要なら弁護士にも確認しておくと安全です。
相続した店舗付き住宅を共有で売るとき
ポイントは3個:
- 特別控除額は共有者全員で3,000万円ではなく、適用を受ける共有者1人につき最高3,000万円
- 特例の適用は共有者ごとに判定され、譲渡所得も各人の持分に応じて計算される
- 家屋は共有せず敷地だけを共有している場合、家屋の所有者以外は原則として適用を受けられない
兄弟で相続した店舗付き住宅を売るというケースで、結果が大きく変わる論点です。国税庁は、特別控除額は共有者全員で3,000万円ではなく、適用を受ける共有者1人につき最高3,000万円であると示しています(出典:国税庁「No.3308 共有のマイホームを売ったとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3308.htm/2026年10月時点)。
特例の適用は共有者ごとに判定され、譲渡所得の計算も各人の所有権持分に応じて行われます。つまり要件を満たす人が複数いれば、それぞれが控除を使える構造です。ただし要件は各人について個別に見られますから、住んでいなかった共有者は居住用財産の特例の前提を欠くことになります。
敷地だけを共有している人は原則対象外
同庁は、家屋は共有でなく敷地だけを共有としている場合、家屋の所有者以外の者は原則としてこの特例の適用を受けることはできないとしています。相続の際に建物は長男、土地は兄弟で分けるという分け方をしていると、ここに当たる可能性があります。
遺産分割の仕方が、将来の売却時の税額に影響するということです。これから分割協議をする段階なら、売却の可能性も踏まえて持分の持ち方を検討する余地があります。分割の内容そのものは法務の問題ですから、税理士と弁護士の双方に相談して決めるのが現実的です。
税務・法務の整理をあわせて進めるために
3,000万円特別控除は税務の制度ですが、使えるかどうかを左右する事実の多くは法務の側にあります。誰が家屋を所有しているか、いつまで住んでいたか、買主と売主がどういう関係か。いずれも契約や登記の形で表れる事実です。
税務面で税理士に確認したい主な事項は、居住用部分の按分と「おおむね90パーセント以上」の判定、住まなくなった時期と期限の計算、解体して売る場合の時期の設計、過去2年間の特例の適用履歴、住宅ローン控除との選択、共有者ごとの適用可否、軽減税率の特例との関係、申告に添付する書類などです。
法務面で弁護士に確認したい主な事項は、遺産分割における家屋と敷地の持分の持たせ方、相続登記の状況、共有者間の売却合意の取り方、親族や関係法人への譲渡を検討する場合の関係整理、店舗部分にテナントがいる場合の賃貸借の承継、売買契約における告知事項の範囲などです。
この特例は、売ってから「使えなかった」とわかっても取り返しがつきません。売り出す前、できれば遺産分割や解体の段取りを決める前に、両方に当たっておくことをおすすめします。
適用除外と、申告でそろえる書類
ポイントは3個:
- 特例を受けることだけを目的に入居したと認められる家屋は適用除外
- 仮住まいなど一時的な入居、別荘など趣味・娯楽・保養のための家屋も適用除外
- 適用を受けるには譲渡所得の内訳書を添えた確定申告が必要
要件を一つずつ満たしていても、入居の経緯そのものが問われる場合があります。同庁は適用除外として、この特例を受けることだけを目的に入居したと認められる家屋、新築期間中の仮住まいなど一時的な目的で入居したと認められる家屋、別荘など主に趣味・娯楽・保養のために所有する家屋を挙げています。
店舗付き住宅で気をつけたいのは、売却を決めてから居住用部分を増やす動きです。店舗だったスペースを住居に改装して住み、割合を上げてから売る。発想としては出てきますが、入居の目的が問われる領域に入ります。
申告でそろえる書類
同庁は、この特例の適用を受けるには確定申告書に「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]」を添付することとしています。また、売買契約日の前日時点の住民票の住所と売却した家屋の所在地が異なる場合には、戸籍の附票の写しなど、その家屋に住んでいたことを示す書類も併せて提出するとされています。
| 確認する条件 | 店舗付き住宅で引っかかりやすい点 |
|---|---|
| 居住用部分の割合 | 共用部分の数え方で90パーセントの判定が動く |
| 住まなくなってからの期間 | 廃業して転居したまま放置し、期限を過ぎている |
| 解体してから売る場合の時期 | 解体後に駐車場として貸した、契約までに時間がかかった |
| 過去2年の特例の履歴 | 別の不動産でこの特例や買換えの特例を使っていた |
| 買主との関係 | 事業を継ぐ親族や自分の会社へ売ろうとしている |
| 共有の持ち方 | 家屋は単独所有で敷地だけを兄弟で共有している |
この表は論点の見取り図です。どれか一つでも当たりそうなら、売り出す前に税理士へ相談しておく価値があります。
よくある質問
Q1. 店舗部分にも3,000万円控除は及びますか
国税庁は、店舗併用住宅で3,000万円の特別控除の特例などの適用を受けられるのは、自分の居住の用に使っていた部分に限られるとしています(No.3452/2026年10月時点)。店舗部分は対象外という整理です。按分の具体的な当てはめは税理士にご確認ください。
Q2. 店舗部分が小さければ全体で使えますか
国税庁は、居住の用に使っていた部分が全体のおおむね90パーセント以上であるときは、全体を居住の用に使っていたものとして特例の適用を受けられるとしています(No.3452/2026年10月時点)。境目の近くにある建物は面積の数え方で結論が変わり得るため、税理士に数字を見てもらってください。
Q3. 商売をやめて引っ越してから何年も経っています
国税庁は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る以前の住居を対象として挙げています(No.3302/2026年10月時点)。期限の数え方は住まなくなった時期の認定にもかかわりますので、早めに税理士に確認することをおすすめします。
Q4. 解体して土地として売っても使えますか
国税庁は、家屋を取り壊した後の敷地も対象としつつ、取り壊しから1年以内に譲渡契約を結ぶこと、その間に駐車場などへ転用していないことなどを条件として挙げています(No.3302/2026年10月時点)。解体の時期と売却活動の段取りは、着手前に税理士へご相談ください。
Q5. 息子に売る場合はどうなりますか
国税庁は、親子や夫婦など特別の関係がある人に売ったものは対象外とし、その範囲に生計を一にする親族、売却後にその家屋で同居する親族、内縁関係の人、特殊な関係のある法人なども含めています(No.3302/2026年10月時点)。親族間での譲渡を検討する前に税理士にご確認ください。
Q6. 自分の会社に建物を移す形なら使えますか
特別の関係がある人の範囲には特殊な関係のある法人も含まれるとされています(No.3302/2026年10月時点)。該当するかどうかは出資や役員の関係によりますので、税理士に判定してもらい、必要なら弁護士にも関係整理を相談してください。
Q7. 兄弟3人の共有だと3,000万円を分け合うのですか
国税庁は、特別控除額は共有者全員で3,000万円ではなく、適用を受ける共有者1人につき最高3,000万円であるとしています(No.3308/2026年10月時点)。ただし適用は共有者ごとに判定されますので、各人の要件充足は税理士にご確認ください。
Q8. 建物は長男、土地は兄弟で共有という形です
国税庁は、家屋は共有でなく敷地だけを共有としている場合、家屋の所有者以外の者は原則としてこの特例の適用を受けることはできないとしています(No.3308/2026年10月時点)。分割のやり直しが可能な段階なら、税理士と弁護士に相談する価値があります。
Q9. 売る前に店舗部分を住居に改装すれば割合が上がりますか
国税庁は、この特例を受けることだけを目的に入居したと認められる家屋を適用除外としています(No.3302/2026年10月時点)。割合を動かすための改装は入居の目的が問われる領域に入りますので、工事を考える段階で税理士にご相談ください。
Q10. 控除を使うには申告が必要ですか
国税庁は、確定申告書に「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]」を添付することとし、売買契約日の前日時点の住民票の住所と売却した家屋の所在地が異なる場合には、その家屋に住んでいたことを示す書類も提出するとしています(No.3302/2026年10月時点)。控除で税額がゼロになる場合も申告は必要です。
まとめ
店舗付き住宅で3,000万円特別控除が使えるかは、按分の話だけでは決まりません。対象が居住の用に使っていた部分に限られること、居住用部分がおおむね90パーセント以上なら全体で扱える取扱いがあること。ここが入口ですが、その先に資産そのものの条件、過去の特例の履歴、買主との関係、共有の持ち方という関門が並んでいます。
とくに店舗付き住宅で当たりやすいのは、廃業後に住まなくなってからの期限、解体して土地にする場合の時期、そして事業を継ぐ親族への譲渡です。いずれも売主が自然に選びそうな動きのなかに、控除を失う経路が潜んでいます。
共有の論点も見逃せません。1人につき最高3,000万円という構造は有利に働きますが、家屋を持たず敷地だけを共有している人は原則として対象外です。遺産分割の形が売却時の税額を決めるということですから、分け方を決める前に税理士と弁護士に相談しておく。それが、この特例をいちばん確かに活かす方法です。
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