売却で「詐欺・悪徳業者」に引っかからないための売主の警戒
QUICK ANSWER ─ この記事が答える問い
売主が悪質な業者を避けるために、契約前に何を確認しておけばよいのでしょうか。
まず免許番号と監督処分歴を公的なデータベースで調べ、次に「成約前に金銭を求められていないか」を確認する流れが基本になります。宅地建物取引業法は無免許営業や重要事項の不実告知を罰則付きで禁じており、報酬も原則として成功報酬です。判断に迷う条件を提示されたときは署名を保留し、弁護士や税理士、消費生活センターに相談することが目安となります。
不動産のトラブルというと買主側の被害を思い浮かべがちですが、売主が標的になる手口も公的機関から注意喚起が出ています。とくに、使い道の少ない土地や築古の建物を「そろそろ整理したい」と考えている所有者は、事情を調べたうえで接触されることがあります。
売主側の被害が見えにくいのは、売却という行為そのものが「お金が入ってくる話」に見えるためです。ところが実際の相談事例では、売れる前に測量費や広告費を求められ、その後連絡が取れなくなるという形が報告されています。
この記事では、宅地建物取引業法と国土交通省・国民生活センターの公開情報をもとに、売主が契約前に確認できる事項と、違和感を覚えたときの動き方を整理します。制度や数値は2026年9月時点の内容で、個別の判断は弁護士・税理士などの専門家への相談を前提としてお読みください。
「悪徳」と呼ばれる行為は、法律上どう位置づけられているか
① 宅地建物取引業を営むには免許が必要で、無免許営業には罰則がある
② 重要な事項を故意に告げない・事実と異なることを告げる行為も罰則の対象
③ 断定的判断の提供や威迫は、監督処分の対象となる禁止行為
免許を持たない事業者は、そもそも媒介できない
宅地建物取引業法は、免許を受けない者が宅地建物取引業を営むことを禁じています(同法第12条第1項)。これに違反した者には、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科が定められています(同法第79条第2号)。他人に名義を貸して営業させる行為も同様に扱われます(同法第13条第1項、第79条第3号)。(出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」)
「言わない」「事実と違うことを言う」も違法になり得る
業者が、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為は禁止されています(同法第47条第1号)。違反した場合は2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科が定められています(同法第79条の2)。売主に対して市場の状況を実際と異なる形で説明するような行為も、この枠組みで評価される可能性があります。
「間違いなく売れます」という説明の位置づけ
将来の環境や利便の状況について、誤解させるような断定的判断を提供する行為や、相手方を威迫する行為も禁止されています(同法第47条の2)。売却の場面で「この価格なら間違いなく売れる」「今日決めないと買主が逃げる」といった説明を受けたときは、その根拠を書面で示してもらう対応が考えられます。根拠の提示を渋られる場合は、契約前に弁護士へ相談しておくと判断材料が増えます。
契約前に確認できる「公的な記録」
① 免許番号・免許の有効期間は国土交通省のシステムで検索できる
② 監督処分の情報は別のサイトにまとまっており、最近5年分が公開されている
③ 事務所の標識や宅地建物取引士証も、その場で確認できる材料になる
免許情報を検索する
国土交通省は「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」を運用しており、宅地建物取引業者については免許番号、商号、代表者名、本店・支店の所在地、資本金額、免許年月日、免許の有効期間、所属団体などを閲覧できます。(出典:国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」/閲覧メニュー)名刺やホームページに記載された免許番号と、システム上の商号・所在地が一致するかを見るだけでも確認になります。
監督処分歴を検索する
処分等の情報は上記システムには掲載されておらず、「国土交通省ネガティブ情報等検索サイト」で確認します。同サイトでは、国土交通大臣や都道府県知事が宅地建物取引業者に対して行った行政処分等について、最近5年分の情報が公開されています。(出典:国土交通省ネガティブ情報等検索サイト(宅地建物取引業者))情報を公開していない自治体もあるため、該当がなくても各都道府県のサイトを併せて見る方法が確実です。
その場で見られる材料
| 確認する場所 | 見るポイント |
|---|---|
| 事務所の標識 | 免許証番号・免許有効期間・商号が掲示されているか(法第50条第1項) |
| 担当者 | 宅地建物取引士証の提示を求められる立場にあること(法第22条の4) |
| 免許番号のカッコ内 | 更新回数を示す数字。営業年数の目安にはなるが、それ自体が信頼性の保証ではない |
| 所属団体 | 保証協会に所属している場合、苦情の解決の申出先が用意されている |
なお、これらの確認をすべて通過したからといって、提示される条件が妥当だと決まるわけではありません。契約内容の評価は別問題であり、条項の解釈は弁護士、売却後の税負担は税理士に確認する二段構えが目安となります。
売主が狙われやすい典型パターン
① 売れる前に測量費・広告費などの名目で金銭を求められる形が報告されている
② 相場から離れた高額査定は、媒介契約を取るための提示である場合がある
③ 売却話とセットで別の土地の購入契約が組み込まれている事例もある
成約前の金銭要求
国民生活センターは、過去に原野商法で土地を購入し処分に困っている消費者に対し、土地を売るためと言って測量費や広告費、手数料など様々な名目で金銭を支払わせる手口の相談が寄せられていると注意喚起しています。土地の売却のためと言われて金銭を請求されたら、契約する前に家族や周りの人に相談すること、不審に感じたらきっぱり断ることが呼びかけられています。(出典:国民生活センター「土地売却のため? 金銭を請求されたら要注意 原野商法の二次被害」)
媒介の報酬は原則として売買契約の成立を前提としたものであり、成約前にまとまった金銭を求められる状況は、それ自体が確認を要するサインになります。支払ってしまった後の回収は容易ではないため、支払う前に弁護士や消費生活センターへ相談する順序が現実的です。
売却と購入がセットになっている形
国民生活センターは、原野等を売却する際に土地の購入契約もセットであることを消費者に気付かせていない事例や、子供に迷惑をかけたくないという気持ちに付け込む事例を挙げています。(出典:国民生活センター「より深刻に!『原野商法の二次被害』トラブル」)契約書が複数になっている、署名する書類の枚数が説明より多いといった場合は、その場で署名せず持ち帰る対応が考えられます。取得する側の契約が含まれると税務上の扱いも変わるため、税理士への確認も検討したい場面です。
高額査定そのものは違法ではないが
業者が売買すべき価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないとされています(法第34条の2第2項)。複数社の査定額に大きな開きがあるときは、金額そのものより「どの取引事例を、どう補正して算出したか」を比べるほうが判断しやすくなります。売出価格の下限は税引後の手取りで決まる面があるため、税理士に試算を依頼しておくと比較の軸が定まります。
「囲い込み」への対処──2025年1月からの運用
① 専任型の媒介では、業者にレインズへの登録と登録証明書の交付が義務づけられている
② 取引状況の登録内容が事実と異なる場合は、指示処分の対象とされている
③ 売主自身がレインズのステータスを確認できる仕組みが用意されている
専任媒介・専属専任媒介を締結した業者には、売り出し物件のレインズへの登録、売主への登録証明書の交付、定期的な業務状況の報告が義務づけられています。国土交通省は、登録証明書を交付するときにレインズのステータス管理機能を分かりやすく説明すること、そして登録した物件の取引状況の登録内容が事実と異なる場合は宅地建物取引業法第65条第1項の指示処分の対象となることを示し、令和7年1月から施行・運用を開始しました。(出典:国土交通省不動産・建設経済局不動産業課 事務連絡(令和6年12月24日)/国土交通省「宅地建物取引業法 法令改正・解釈について」)
売主としては、登録証明書を受け取ったうえで、ステータスが「公開中」になっているかを自分で確認できます。内見の打診が続いているのに長く「一時紹介停止中」のままであるなど説明と食い違う状態が続く場合は、業者に理由を書面で求め、それでも解消しないときは免許を出した行政庁への相談や、弁護士への相談を検討する流れが目安です。
署名の前にたどりたい手順
① 検索・書面・相談の3段階を、その日のうちに終わらせようとしない
② 記録が残る形(書面・メール)でやり取りを重ねておく
商号と免許番号で2つのサイトを照合します。数分で終わる作業であり、最初にやっておく価値があります。
査定額の根拠、想定する売却期間、費用の内訳を書面かメールで受け取ります。口頭のみの説明は後から検証できません。
いつ、何に対して、いくら支払うのかを一覧にします。成約前の支払いが含まれる場合は理由を確認します。
手取り額は税引後で判断する必要があるため、税理士に概算を確認しておくと提示条件の評価がしやすくなります。
解除、違約金、費用償還、特約欄を読みます。標準的な内容と異なる条項があれば、弁護士に確認してから判断します。
その場での即決を求められること自体が検討材料になります。持ち帰って読み返す時間を確保します。
おかしいと感じたときの相談先
① 消費生活相談は消費者ホットライン188から最寄りの窓口につながる
② 業者の行為そのものは、免許を出した行政庁が指導・監督の窓口になる
③ 金銭の回収や契約の効力を争う段階では弁護士の関与が必要になる
国民生活センターは、困ったときはお住まいの自治体の消費生活センター等に相談するよう案内しており、窓口として消費者ホットライン188を示しています。(出典:前掲・国民生活センター見守り情報)また、宅地建物取引業者に対する指導や監督処分は免許を出した国土交通大臣または都道府県知事が行うため、業者の行為に関する申出は免許権者の担当部署が入口になります。
すでに金銭を支払ってしまった、あるいは契約を解消したいという段階では、時効や証拠の保全が関わってくるため、早い段階で弁護士に相談したほうが選択肢が残りやすくなります。支払った金銭の税務上の扱いについては、税理士に整理を依頼しておくと申告時の混乱を避けやすくなります。
売却にまつわる税務の基本を押さえておく
① 譲渡所得は所有期間により長期・短期に区分され、税額の計算方法が異なる
② 事業用建物の譲渡は消費税の課税対象となり得るが、土地の譲渡は非課税とされている
③ 不動産の譲渡に関する契約書には印紙税の軽減措置がある
税額の見通しを自分で持っておくことは、不自然な条件を見抜く力にもつながります。土地建物等の譲渡所得は、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものを長期、5年以下のものを短期として区分されます。(出典:国税庁 タックスアンサー No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税))税額は長期が所得税15%・住民税5%、短期が所得税30%・住民税9%を基礎に、復興特別所得税をあわせて申告・納付することとされています。(出典:国税庁 No.3208/国税庁 No.3211)
また、事業に使用していた建物や店舗賃貸用の建物の譲渡は消費税の課税対象になるとされる一方(出典:国税庁 No.3240 個人が事業用建物等を譲渡した場合の消費税)、土地の譲渡および貸付けは非課税取引とされています。(出典:国税庁 No.6201 非課税となる取引)契約書については、平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成される不動産の譲渡に関する契約書のうち記載金額が10万円を超えるものが印紙税の軽減措置の対象とされています。(出典:国税庁 No.7108)具体的な税額や適用可否は個別事情で変わるため、税務署または税理士にご確認ください。
【税務・法務に関する専門家相談のご案内】
税理士(不動産税務に詳しい方)
売却前の手取り額の試算、土地と建物の価額区分、消費税の納税義務の判定、譲渡所得の申告、業者に支払った費用の取扱いの整理など。数字の見通しを持っておくと、不自然な提示に気づきやすくなります。
弁護士(不動産取引に詳しい方)
契約書の条項の妥当性、支払済み金銭の返還請求、契約の解除や取消しの可否、業者とのやり取りの記録の残し方など。争う可能性が出てきた段階では、早めの相談が選択肢を広げます。
建築士
建物の現況把握、現行法令への適合状況の確認、修繕が必要な範囲の整理など。第三者の見立てがあると、価格や条件の説明の妥当性を検証しやすくなります。
設備業者
空調・給排水・電気設備の劣化状況の確認と概算費用の把握など。過大な工事提案を受けた場合の比較材料になります。
よくある質問(FAQ)
① 制度で答えが決まっている論点と、事実関係で変わる論点を分ける
② 金銭が動く話は、支払う前に相談するほうが選択肢が残りやすい
まとめ
① 免許情報と処分歴の確認は、数分で終わる基本動作
② 成約前の金銭要求と即決の要求は、立ち止まる合図
③ 税理士・弁護士への確認を挟むことで、判断の材料が増える
売主が身を守る方法は、特別なものではありません。公開されている記録を照合し、説明を書面で受け取り、支払いの時期を確認する。この3つを踏むだけで、事前に避けられる範囲は広がります。
一方で、条件の妥当性そのものは書類の確認だけでは見抜きにくい部分です。税負担の見通しは税理士に、契約条項の意味と責任範囲は弁護士に確認しておくことで、提示された条件を評価する軸ができます。
急かされている感覚があるときほど、いったん時間を置く判断が効いてきます。手元の書面を持ち帰り、公的なサイトで調べ、相談先を確保する。その順序を守ることが、結果としてもっとも確かな備えになります。
── ご相談はこちら ──
事業用不動産の売却、まずはご相談ください
区分店舗・区分事務所・事業用区分マンション・店舗付き住宅・築古ビルなど、事業用不動産の売却をお考えの方はLINEからお気軽にご相談ください。
SUNNY SIDE LIFE
事業用不動産専門メディア
事業用不動産に特化した情報メディアです。実務経験と一般的に公開されている情報をふまえ、取得・融資・運用・売却までの情報などを発信しています。
【重要】当サイトご利用にあたっての注意事項
■ 情報の位置づけについて
本サイトに掲載されている記事は、一般的な参考情報として作成・提供されています。特定の個人や法人に対する専門的助言、推奨、保証を行うものではありません。
■ 読者の皆様へ
- 本サイトの情報はあくまで参考材料としてご活用ください
- 実際の不動産取引、投資判断、契約行為等は、必ず専門家(不動産会社、税理士、弁護士等)にご相談のうえ、ご自身の責任において行ってください
- 本サイトの情報を参考にした結果生じた損害、トラブル、法的問題等について、当サイトは一切の責任を負いません
※本サイトの情報に基づく判断・行動は、すべて閲覧者ご自身の責任において行われるものとします。


