店舗付き住宅を相続・贈与する場合の税金|事前にやるべき対策

QUICK ANSWER ─ この記事が答える問い

店舗付き住宅を相続・贈与すると、どんな税金がかかり、何を備えればよいのか?

相続なら相続税、生前に渡すなら贈与税が関わります。店舗付き住宅は店舗部分と住居部分で扱いが分かれ、評価や特例の適用が複雑になりやすいのが特徴です。事前にやるべき対策は、財産と評価の把握、小規模宅地等の特例など使える制度の確認、相続と贈与どちらが有利かのシミュレーション、遺産分割でもめないための準備などです。判断は専門的なため、早い段階で税理士に、分割や名義に不安があれば弁護士にも相談しておくことが、税負担とトラブルの両方を抑える鍵とされています。

1階が店舗、2階以上が住居といった「店舗付き住宅」を次の世代へ引き継ぐとき、相続や贈与にかかる税金は避けて通れないテーマです。店舗付き住宅は、自宅だけの場合と違って、事業用の店舗部分と居住用の住居部分が一体になっているため、税金の計算や特例の適用が複雑になりやすい傾向があります。

「相続と贈与のどちらが得なのか」「特例は使えるのか」「何も準備しないとどうなるのか」──こうした疑問を抱えたまま時間が過ぎると、本来使えたはずの制度を逃したり、いざ相続が起きたときに家族がもめたりするおそれがあります。税金の対策は、亡くなってからでは打てる手が限られるため、事前の準備が何よりも大切です。

本記事では、店舗付き住宅を相続・贈与する場合にかかる税金の基本と、店舗付き住宅ならではの注意点、そして事前にやっておくべき対策を解説します。あわせて、税理士や弁護士など専門家に相談すべきタイミングもまとめました。一般的な参考情報として、早めの備えのきっかけにしてください。

相続と贈与でかかる税金の基本

ポイントは3個:①相続には相続税、生前贈与には贈与税、②それぞれ基礎控除や非課税の枠がある、③どちらが有利かは状況で変わる。

まず、税金の基本を押さえておきましょう。亡くなった方から財産を引き継ぐ「相続」には相続税が、生きているうちに財産を渡す「贈与」には贈与税がかかります。相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人数」が目安とされる基礎控除があり、財産の評価額がこれを超える部分に課税されます。

一方、贈与税には年間110万円の基礎控除(暦年課税の場合)があるほか、一定の要件で選べる相続時精算課税制度などの仕組みもあります。一般に贈与税は相続税より税率が高めに設定されているとされますが、計画的に活用すれば相続財産を事前に減らせる場合もあります。相続と贈与のどちらが有利かは、財産規模・家族構成・将来計画によって変わるため、自己判断は禁物です。早い段階で税理士にシミュレーションを依頼し、全体像を把握することが対策の出発点になります。

また、相続税と贈与税は別々の税金に見えて、実は密接につながっています。生前贈与をどう行うかで相続時の財産が変わり、結果として相続税にも影響するためです。「目先の贈与税だけ」「相続税だけ」と片方だけを見て判断すると、トータルでは不利になることもあります。店舗付き住宅のように評価額が大きくなりやすい財産では、相続と贈与を通算で捉え、長期的な視点で対策を組み立てることが、税負担を抑えるうえで重要になります。だからこそ、両方を見渡せる税理士に早めに相談する意味が大きいのです。

店舗付き住宅ならではの評価と按分

ポイントは3個:①土地は路線価等、建物は固定資産税評価額が基本、②店舗部分と住居部分で扱いが分かれる、③賃貸している部分は評価が下がる場合がある。

店舗付き住宅の税金が複雑になる最大の理由が、評価と按分です。不動産の評価は、土地が路線価方式または倍率方式、建物が固定資産税評価額をもとにするのが一般的とされます。店舗付き住宅では、これを店舗部分と住居部分に分けて考える必要が生じる場面があります。

たとえば、後述する小規模宅地等の特例は、居住用と事業用・貸付用で適用の区分や限度面積が異なります。また、店舗部分を第三者に貸している場合は、貸家建付地や貸家として評価が下がる扱いがあるとされ、自用の場合より評価額が低くなる傾向があります。どの部分をどう評価し、どの面積にどの特例を当てはめるかで、最終的な税額が大きく変わります。この按分と評価の判断は専門性が高いため、不動産税務に詳しい税理士に確認することが欠かせません。

按分の根拠も重要です。店舗部分と住居部分の面積比をどう算定するか、建物の構造や利用実態をどう反映するかによって、評価額も特例の適用面積も変わってきます。過去のリフォームで用途や間取りが変わっている場合や、店舗を一部だけ住居として使っている場合などは、実態の整理が難しくなりがちです。こうした論点を曖昧にしたまま申告すると、特例の取りこぼしや、逆に過大な適用による否認のリスクが生じます。建物の利用区分の確認には建築士の知見が役立つこともあるため、必要に応じて税理士と連携して整理しておくと安心です。

小規模宅地等の特例|店舗付き住宅での使い方

ポイントは3個:①土地の評価額を大きく減額できる制度、②居住用・事業用・貸付用で区分が異なる、③要件が細かく適用判断は税理士が前提。

相続税対策の柱となるのが「小規模宅地等の特例」です。これは、被相続人が住んでいた土地や事業に使っていた土地について、一定の要件を満たせば、限度面積まで評価額を大きく減額できる制度とされています。店舗付き住宅では、住居部分が居住用の宅地として、店舗部分が事業用または貸付用の宅地として、それぞれ特例の対象になり得ます。

ただし、特例には「誰が引き継ぐか」「事業や居住を相続後も続けるか」といった継続要件や、限度面積・減額割合のルールが細かく定められています。区分ごとに適用できる面積の上限があり、複数の区分を併用する場合の計算も複雑です。要件を満たさなければ使えず、適用を誤ると税額が大きく変わるため、店舗付き住宅でこの特例を活用するには、不動産税務に詳しい税理士による事前のシミュレーションが前提となります。どの相続人がどの部分を引き継ぐと特例を最大限活かせるかは、遺産分割の方針にも関わるため、弁護士とも連携して検討するとよいでしょう。なお、相続後に事業や居住を続けることが要件となる場合があるため、「相続後すぐに売却したい」と考えているケースでは、特例の適用と売却の希望が両立するかを事前に確認しておくことも大切です。

生前贈与という選択肢と「みなし贈与」の注意点

ポイントは3個:①生前贈与で相続財産を事前に減らせる場合がある、②制度選択は慎重に、③著しく低い価格の売買はみなし贈与に注意。

相続を待たずに、生前のうちに店舗付き住宅を渡す「生前贈与」も選択肢の一つです。計画的に贈与すれば、相続時の財産を事前に圧縮できる場合があります。暦年課税の基礎控除を活用する方法や、相続時精算課税制度を使う方法などがありますが、制度には要件や適用後の制約があり、一度選ぶと変更できないものもあります。どの方法が有利かは個別事情で変わるため、贈与を実行する前に税理士へ相談することが大切です。

特に注意したいのが「みなし贈与」です。親族間で店舗付き住宅を市場価格より著しく低い価格で売買すると、時価との差額が贈与とみなされ、買主側に贈与税が課される可能性があるとされています。「身内だから安く譲りたい」という善意が、かえって相手の税負担を生むこともあるのです。価格設定と税務上の影響は売買や贈与の前に税理士へ確認し、名義変更や契約の進め方に法的な不安があれば弁護士にも相談しながら進めると安心です。

事前にやるべき対策|5つの準備

ポイントは3個:①財産と評価の把握から始める、②特例・制度の活用を検討、③分割でもめない準備と資金の備え。

税負担とトラブルを抑えるために、事前にやっておきたい対策を5つにまとめます。

  • ① 財産の把握と評価のシミュレーション
    店舗付き住宅を含む財産を洗い出し、おおよその評価額と税額を税理士に試算してもらいます。
  • ② 特例・制度の活用可否の確認
    小規模宅地等の特例や贈与の制度が使えるか、誰が引き継ぐと有利かを検討します。
  • ③ 相続と贈与の比較
    そのまま相続するか、生前贈与を組み合わせるか、税負担を比較して方針を決めます。
  • ④ 遺言・分割方針の準備
    分けにくい不動産でもめないよう、遺言の作成や分割の方針を整えます(弁護士の関与が有効)。
  • ⑤ 納税資金の準備
    相続税の納税資金を見込み、不足する場合は生命保険や売却も含めて備えます。
  • 特に④の分割方針は見落とされがちです。店舗付き住宅は物理的に分けにくく、相続人が複数いると「誰が引き継ぐか」でもめやすい財産です。安易に共有にすると、その後の売却や活用に全員の同意が必要となり、トラブルの火種になりやすいとされています。遺言の作成や分割の取り決めは法的な論点を含むため、弁護士に相談しながら準備しておくことが、家族の関係を守ることにつながります。また、⑤の納税資金は、現金が乏しく不動産が中心の場合に問題になりやすいため、売却も視野に入れた資金計画を税理士とともに立てておくと安心です。

    【税務・法務に関する専門家相談のご案内】

    税理士(不動産投資専門):相続税・贈与税の試算、店舗部分と住居部分の按分、小規模宅地等の特例の適用判断、相続時精算課税など制度の選択、みなし贈与のリスク確認、納税資金の準備など、相続・贈与にまつわる税務全般は不動産税務に詳しい税理士への相談が安心です。

    弁護士(不動産・事業用):遺言の作成、遺産分割協議や共有の解消、名義・登記の整理、賃貸借契約の引き継ぎ、相続人間の紛争予防などは、不動産分野に詳しい弁護士への相談が有効とされます。

    建築士:建物の状態評価や、店舗・住居の利用区分の確認、将来の活用や建て替えの判断材料となる調査などは建築士の知見が役立ちます。

    設備業者:店舗設備や住居設備の状態確認や修繕見積もりは、活用・売却・分割の判断材料として設備業者への依頼が有効です。

    よくある質問(FAQ)

    ポイントは1個:店舗付き住宅の相続・贈与についてよく寄せられる10の疑問に回答します。個別の判断は税理士・弁護士など専門家への相談をおすすめします。
    Q1. 相続と贈与、どちらが税金面で有利ですか?
    A. 一概にはいえません。財産規模、家族構成、将来計画、使える特例によって有利不利が変わります。一般に贈与税は税率が高めとされますが、計画的な生前贈与が有効な場合もあります。税理士にシミュレーションを依頼して比較するのが確実です。
    Q2. 店舗部分と住居部分で税金の扱いは違いますか?
    A. 違う場合があります。小規模宅地等の特例は居住用・事業用・貸付用で区分や限度面積が異なり、按分によって評価や税額が変わります。計算が複雑なため、税理士に按分と特例の適用を確認することをおすすめします。
    Q3. 小規模宅地等の特例は店舗付き住宅でも使えますか?
    A. 要件を満たせば、住居部分は居住用、店舗部分は事業用または貸付用として対象になり得るとされています。ただし継続要件や限度面積などの条件が細かいため、適用の可否と有利な引き継ぎ方は税理士に判断を仰ぐとよいでしょう。
    Q4. 親族に安く売れば贈与より得ですか?
    A. 市場価格より著しく低い売買は、差額がみなし贈与と判定され、買主に贈与税が課される可能性があるとされています。安く譲ったつもりが相手の税負担を生むこともあるため、価格設定は税理士に相談してから決めるのが安全です。
    Q5. 相続人が複数いるとき、店舗付き住宅はどう分ければよいですか?
    A. 物理的に分けにくいため、一人が取得して代償金を払う、売却して分ける、共有にするなどの方法があります。共有は後のトラブルになりやすいとされ、慎重な検討が必要です。分割方針は税負担にも影響するため、税理士と弁護士に相談しながら決めるとよいでしょう。
    Q6. 生前に何も準備しないとどうなりますか?
    A. 使える特例を逃したり、遺産分割でもめたり、納税資金が不足したりするリスクが高まります。相続が起きてからでは打てる手が限られるため、早めに財産の評価と対策を税理士・弁護士に相談しておくことが望まれます。
    Q7. 賃貸している店舗付き住宅は評価が下がりますか?
    A. 第三者に貸している部分は、貸家建付地や貸家として評価が下がる扱いがあるとされ、自用より評価額が低くなる傾向があります。ただし要件や計算は専門的なため、実際の評価は税理士に確認することをおすすめします。
    Q8. 納税資金が足りない場合はどうすればよいですか?
    A. 分割して納める延納や物納のほか、不動産の売却で資金を確保する方法があります。現金が乏しく不動産が中心の場合に起きやすい問題のため、事前に税理士と資金計画を立て、必要なら売却も視野に入れておくと安心です。
    Q9. 遺言は作っておいたほうがよいですか?
    A. 分けにくい店舗付き住宅では、誰が引き継ぐかを明確にしておくと、分割をめぐる争いを防ぎやすくなります。遺言は形式の不備で効力が問題になることもあるため、作成にあたっては弁護士に相談しておくと安心です。特例の活用方針とも整合させるとよいでしょう。
    Q10. まず何から始めればよいですか?
    A. 店舗付き住宅を含む財産を洗い出し、評価額と税額の見通しを税理士に試算してもらうことが出発点です。そのうえで、特例の活用や相続・贈与の比較、分割方針の準備へと進めます。分割や遺言が絡む場合は弁護士にも早めに相談するとよいでしょう。

    まとめ|「事前の準備」が税金と争いを減らす

    ポイントは3個:①店舗付き住宅は評価・按分・特例が複雑、②相続・贈与の比較と特例の活用を事前に検討、③分割と納税資金の準備を専門家とともに進める。

    店舗付き住宅を相続・贈与する際は、相続税・贈与税の基本に加えて、店舗部分と住居部分の按分、小規模宅地等の特例の使い方、みなし贈与のリスクなど、押さえるべき論点が多くあります。これらは住宅だけの場合より複雑で、知っているかどうかで税負担が大きく変わることもあります。

    そして何より重要なのが、「事前の準備」です。財産と評価を把握し、特例や制度の活用を検討し、相続と贈与を比較し、分割方針と納税資金を整える──こうした備えは、相続が起きてからではできないものが少なくありません。早めに動くほど、選べる対策は多くなります。

    税金の試算や特例の判断は税理士に、遺言や分割・名義の整理は弁護士に、というように専門家を頼りながら準備を進めれば、税負担と家族間の争いの両方を減らすことにつながります。状況によっては、保有を続けるより売却して資産を整理するほうが、結果的に円満な承継になる場合もあります。まずは財産の現状を整理することから、最初の一歩を踏み出してみてください。

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