事業用不動産を贈与した年の税金|贈与税と受贈者側の負担

QUICK ANSWER ─ この記事が答える問い

事業用不動産を贈与すると、受け取った側にはどんな税負担があるのか?

事業用不動産を贈与すると、受け取った側(受贈者)に贈与税がかかるのが基本で、不動産取得税や名義変更の登録免許税、その後の固定資産税も負担することになります。贈与者側でも、事業用建物ではみなし譲渡として消費税が問題になる場合があります。将来売却する際の取得費や保有期間の引き継ぎも関わるため、税務は税理士、契約や相続への影響は弁護士に相談すると安心です。

事業用不動産を家族や親族に贈与したいと考えたとき、多くの方が気にされるのが税金です。とくに、財産を受け取った側にどれだけの負担が生じるのかは、贈与を進めるうえで欠かせない確認事項です。「あげる側」の視点だけで進めてしまうと、受け取った側が思わぬ税負担に直面することもあります。

贈与では、受け取った側(受贈者)に贈与税がかかるのが基本ですが、それだけではありません。不動産を取得することにより不動産取得税がかかり、名義変更には登録免許税が必要になります。取得した後は固定資産税の負担も生じます。さらに、贈与した側(贈与者)にも、事業用不動産ならではの税金が関わる場合があります。

この記事では、事業用不動産を贈与した年に関わる税金を、受贈者側の負担を中心に整理します。あわせて、贈与者側の税金や、将来売却する際の取得費の引き継ぎ、手続きの注意点までを解説します。なお、税額や有利な方法は個別の事情によって変わります。実際の判断にあたっては、税理士や弁護士など専門家へ相談することをおすすめします。

贈与した年に関わる税金の全体像(贈与者・受贈者)

ポイントは3個:
① 受贈者には贈与税・不動産取得税・登録免許税などがかかる
② 贈与者側でも消費税が関わる場合がある
③ 種類が多く仕組みも違うため、全体像は税理士に整理してもらいたい

事業用不動産の贈与にかかる税金は、受け取った側と贈与した側の双方に関わります。まずは、それぞれにどんな税金がかかるのかを整理しておきましょう。

立場 関わる主な税金
受贈者(受け取る側) 贈与税・不動産取得税・登録免許税、取得後の固定資産税
贈与者(渡す側) 事業用建物の消費税(一定の事業者の場合)など

このように、贈与では受け取る側に多くの税金がかかる一方、渡す側にも事業用ならではの税金が関わる場合があります。受贈者側と贈与者側で負担する税金が異なり、それぞれ仕組みも違うため、まずは全体像を税理士に整理してもらうと、誰にどれだけの負担が生じるのかを把握しやすくなります。

受贈者にかかる贈与税の考え方

ポイントは3個:
① 贈与税は受け取った側が負担するのが基本
② 暦年課税と相続時精算課税という考え方がある
③ 不動産の評価額をもとに計算されるため、税理士の試算が有効

贈与税は、財産を受け取った側(受贈者)が負担するのが基本とされています。事業用不動産のように評価額が大きくなりやすい財産では、贈与税の負担も相応の金額になることがあるため、受け取る側があらかじめ見通しを立てておくことが大切です。

贈与税の計算方法には、大きく分けて二つの考え方があるとされています。ひとつは暦年課税で、1年間に受け取った財産の合計に対して課税する方法です。一般的に、年間で一定額(基礎控除として年間110万円までとされることが多い)までは課税されず、それを超えた部分に税がかかるとされています。もうひとつが相続時精算課税制度で、一定の親子や祖父母・孫などの関係で選択でき、将来の相続の際に精算する仕組みとされています。

贈与税は、不動産の贈与税評価額をもとに計算されます。土地と建物では評価の考え方が異なるとされ、事業用不動産では利用状況なども関わることがあります。どちらの課税方法を選ぶか、評価額がどうなるかによって受贈者の負担は変わるため、家族の状況や将来の相続まで含めて、税理士に試算を依頼したうえで判断するのが安心です。

受贈者にかかる贈与税以外の負担

ポイントは3個:
① 不動産取得税は贈与による取得でもかかる
② 名義変更には登録免許税がかかり、相続より高くなる傾向
③ 取得後は固定資産税の負担も引き継ぐ

受贈者の負担は、贈与税だけではありません。贈与によって不動産を取得すると、不動産取得税がかかるのが一般的です。相続による取得では不動産取得税がかからないとされる一方で、贈与では課税の対象になる点は、相続との違いとして押さえておきたいところです。

また、名義を変えるための所有権移転登記には登録免許税がかかります。贈与による名義変更の税率は、相続の場合よりも高くなる傾向があるとされます。これらは金額の大小にかかわらず、贈与を受ける際のコストとして受贈者が見込んでおく必要があります。

さらに、贈与を受けて所有者になった後は、毎年の固定資産税を受贈者が負担することになります。取得時の一時的な税金だけでなく、その後継続してかかる負担も含めて考えることが大切です。受贈者にかかるこれらの負担の全体像は、贈与税とあわせて税理士に確認しておくことで、受け取る側が安心して判断しやすくなります。

贈与者側にかかる税金と負担付贈与の注意

ポイントは2個:
① 事業用建物ではみなし譲渡として消費税が関わる場合がある
② 借入付きの贈与などは扱いが変わることがあり、要確認

贈与では受け取る側の負担に目が向きがちですが、贈与した側にも税金が関わる場合があります。とくに見落とされやすいのが消費税です。事業を営む個人が事業用の建物を贈与した場合、一定の事業者にあたると、これがみなし譲渡として消費税の課税対象になることがあるとされます。事業用不動産の贈与では、この論点が関わる可能性があります。

また、注意したいのが、借入などの負担を伴う贈与です。ローンが残っている不動産を、その返済義務とあわせて渡すような場合には、通常の贈与とは扱いが変わることがあるとされます。負担の分だけ実質的に対価があるとみなされ、贈与した側に思わぬ税金が生じる可能性もあります。単純な贈与のつもりでも、条件によっては扱いが異なる点に注意が必要です。

これらの論点は、判定が専門的で、自己流では見落としやすい部分です。事業用建物の消費税の要否や、負担を伴う贈与の扱いは、贈与を進める前に税理士に確認しておくことが欠かせません。契約の組み立て方に関わる部分は、弁護士にも相談しておくと安心です。

将来の売却に備えた取得費・保有期間の引き継ぎ

ポイントは2個:
① 贈与で取得した場合、取得費や取得時期を引き継ぐ考え方がある
② 将来の売却まで見据えた検討には税理士の助言が有効

贈与を受けた不動産は、その時点の税金だけでなく、将来売却するときのことも考えておきたいところです。贈与によって取得した不動産を後で売却する場合、取得費や取得した時期の扱いについて、贈与した人のものを引き継ぐ考え方があるとされています。

これは、将来の譲渡所得税の計算に影響する重要なポイントです。取得費は、譲渡所得を計算するうえで差し引ける金額であり、取得した時期は所有期間の判定に関わります。贈与で受け取ったからといって、取得費や取得時期がその贈与の時点にリセットされるとは限らない、という点を知っておくことが大切です。将来売るときになって初めてこの仕組みを知り、想定と異なる税額になって驚くこともあります。

このように、贈与は「受け取って終わり」ではなく、将来の売却まで影響が続くことがあります。取得費や保有期間の引き継ぎがどうなるか、将来売却したときの税負担がどうなりそうかは、贈与の段階で税理士に確認しておくと、長い目で見た判断がしやすくなります。取得時の資料を受贈者がきちんと引き継いでおくことも大切です。とくに、贈与のときの税負担だけを見て決めると、将来売却する段階で想定と異なる税額になることもあります。贈与する時点と、将来手放す時点の両方を視野に入れて考えることが、後悔の少ない選択につながります。

手続きの流れと注意点(契約書・登記・みなし贈与)

ポイントは2個:
① 贈与契約書・登記・贈与税の申告が基本の流れ
② みなし贈与や相続への影響にも注意が必要

事業用不動産の贈与は、口約束だけで済ませるのは避けたいところです。一般的な手続きの流れをステップで整理します。実際の手順は状況によって異なるため、あくまで一例としてご覧ください。

  • STEP1 評価と税額の確認
    贈与する範囲や評価額、受贈者・贈与者の税負担の見込みを確認します。
  • STEP2 贈与契約書の作成
    誰に何をいつ贈与するかを書面で明確にします。
  • STEP3 名義変更の登記
    所有権移転の登記を行い、名義を変更します。
  • STEP4 贈与税などの申告・納税
    受贈者が必要な申告を期限内に行い、税を納めます。
  • 注意したいのが、みなし贈与という考え方です。形式上は売買であっても、著しく低い価額で家族に譲った場合には、その差額が実質的な贈与とみなされ、贈与税の対象になることがあるとされます。家族間だからと安易に価格を決めると、受贈者に思わぬ課税が生じる可能性があるため、慎重な確認が求められます。

    また、生前の贈与は、将来の相続の際にほかの相続人との関係で問題になることもあります。特定の家族にだけ贈与を行うと、相続の場面で遺留分や特別受益といった論点が関わることがあります。贈与契約書の作成や登記、相続への影響は弁護士に、評価や申告は税理士に確認しながら進めることで、手続きを安心して進めやすくなります。登記の実務については司法書士が関わることもあります。

    【税務・法務に関する専門家相談のご案内】

    ● 税理士(不動産投資専門)
    受贈者の贈与税の計算、暦年課税と相続時精算課税の比較、不動産の評価額、不動産取得税や登録免許税、事業用建物の消費税や負担付贈与の扱い、将来売却時の取得費・保有期間の引き継ぎなど、贈与にかかる税金は税理士の専門領域です。受贈者・贈与者双方の負担を試算してもらうと、有利な方法を検討しやすくなります。

    ● 弁護士(不動産・事業用)
    贈与契約書の作成、名義変更や登記に関する確認、負担付贈与の条件設定、テナントが入っている場合の賃貸借の扱い、遺留分や特別受益など相続への影響、家族間の争いの予防など、契約・権利関係の論点は弁護士への相談が有効です。事業承継の取り決めにも役立ちます。

    ● 建築士
    建物の状態や遵法性の確認は、評価や今後の活用を考える材料になります。引き継ぎ後の維持管理を見据えた確認にも役立ちます。

    ● 設備業者
    給排水・空調・電気などの設備の状態確認は、引き継ぎ後の維持管理を考えるうえで役立ちます。事前の点検はトラブル防止にも有効です。

    よくある質問(FAQ)

    事業用不動産を贈与した年の税金と受贈者側の負担について、よく寄せられる疑問を10問にまとめました。税額や有利な方法は状況により異なるため、最終的な判断は税理士・弁護士など専門家にご確認ください。
    Q1. 贈与税は誰が払うのですか?
    一般的に、財産を受け取った側(受贈者)が納めるとされています。負担の見通しを立てるためにも、受け取る前に税理士へ相談しておくと安心です。
    Q2. 受贈者には贈与税以外にどんな負担がありますか?
    不動産取得税や名義変更の登録免許税がかかり、取得後は固定資産税も負担します。全体像は税理士に整理してもらうと把握しやすくなります。
    Q3. 相続で受け取るのと税金は違いますか?
    贈与では不動産取得税がかかり、登録免許税も相続より高くなる傾向があるとされます。どちらが合うかは状況次第のため、税理士に比較してもらうのがおすすめです。
    Q4. 暦年課税と相続時精算課税はどちらがよいですか?
    家族の状況や将来の相続への影響で有利不利が変わるため、一概には言えません。両方を比べた試算を税理士に依頼するのがおすすめです。
    Q5. 贈与した側にも税金がかかりますか?
    事業用建物を贈与した場合、一定の事業者にあたるとみなし譲渡として消費税が関わることがあるとされます。判定は難しいため、税理士への確認が欠かせません。
    Q6. ローンが残っている不動産を贈与できますか?
    返済義務とあわせて渡す場合、通常の贈与と扱いが変わることがあるとされます。思わぬ税金が生じる可能性があるため、税理士と弁護士に確認しましょう。
    Q7. 贈与で受け取った不動産を将来売るとどうなりますか?
    取得費や取得時期を贈与した人から引き継ぐ考え方があるとされ、将来の譲渡所得税に影響します。取得時の資料を引き継ぎ、税理士に確認しておくと安心です。
    Q8. 安く売れば贈与税は避けられますか?
    著しく低い価額で譲ると、差額が贈与とみなされ受贈者に課税されることがあるとされます。安易な価格設定は避け、税理士に相談するのが安心です。
    Q9. 贈与契約書は作ったほうがよいですか?
    口約束だと贈与の事実が後で不明確になり、家族間や税務上の問題につながることがあります。契約書の内容は弁護士に確認してもらうと安心です。
    Q10. まず何から始めればよいですか?
    贈与する範囲や評価、受贈者・贈与者双方の負担を整理することからです。早めに税理士へ税金面を、弁護士へ契約や相続への影響を相談すると判断材料がそろいます。

    まとめ

    ポイントは3個:
    ① 受贈者は贈与税・不動産取得税・登録免許税・固定資産税を負担する
    ② 贈与者側の消費税や負担付贈与、将来の取得費引き継ぎにも注意
    ③ 税金は税理士、契約・相続への影響は弁護士に相談する

    事業用不動産を贈与した年は、受け取った側に多くの税負担が生じます。中心となる贈与税に加えて、不動産取得税や名義変更の登録免許税、そして取得後の固定資産税まで、受贈者が負担する税金は複数にわたります。「あげる側」だけでなく「受け取る側」の負担まで見通しておくことが、円滑な贈与につながります。

    また、贈与した側でも事業用建物の消費税が関わる場合があり、借入を伴う贈与では扱いが変わることもあります。さらに、贈与で受け取った不動産を将来売却する際には、取得費や保有期間の引き継ぎが譲渡所得税に影響します。贈与は受け取って終わりではなく、その後の税負担まで見据えて考えることが大切です。

    これらの複雑な論点を整理するには、税金面は税理士に受贈者・贈与者双方の負担を試算してもらい、契約や相続への影響は弁護士に確認を依頼し、連携して進めることが安心につながります。本記事を全体像の把握に役立てつつ、具体的な判断は税理士・弁護士とともに進めていきましょう。

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