事業用不動産 20年以上区分店舗を持つオーナーが今考えるべきこと
QUICK ANSWER ─ この記事が答える問い
長く区分店舗を保有してきたオーナーは、今、何を考えるべきか?
長期保有では、減価償却の進行、建物や設備の経年、収益力や賃貸状況の変化が積み重なっています。まずは現状を棚卸しし、そのうえで持ち続けるか、売却するか、次の世代へ承継するかを見直すことが大切です。税務は税理士に、承継や契約の論点は弁護士に相談しながら、今の状況に合った方向を考えるとよいでしょう。
区分店舗を20年以上にわたって保有してきた。安定した賃料に支えられ、大きな問題もなく持ち続けてきた――そんなオーナーの方は少なくありません。長く保有できたこと自体が、その物件の底力の表れともいえます。しかし、長い時間の経過は、物件にも、そしてオーナー自身の状況にも、静かに変化をもたらしています。
とくに大きな問題が起きていないと、現状を見直す機会はなかなか訪れません。しかし、20年という節目は、これまでを振り返り、これからを考える格好のタイミングです。今のまま持ち続けるのがよいのか、それとも別の選択を検討すべきなのか。落ち着いて棚卸しをする価値があります。
この記事では、20年以上区分店舗を保有してきたオーナーに向けて、長期保有だからこそ今確認したい論点と、持ち続ける・売却する・承継するという選択肢の見直し方を整理します。なお、適した選択は物件や状況によって変わります。実際の判断にあたっては、税理士や弁護士など専門家へ相談することをおすすめします。
なぜ20年の節目に見直すのか
① 長い時間が物件と自分の状況を変えている
② 大きな問題がない今こそ落ち着いて見直せる
長く保有してきた物件を、あらためて見直す意味はどこにあるのでしょうか。理由の一つは、20年という時間が、物件にもオーナー自身にも、無視できない変化を積み重ねているからです。取得した当時と今とでは、建物の状態も、周辺の環境も、そして自分自身の年齢や家族の状況も変わっています。
こうした変化は、日々のなかでは気づきにくいものです。毎月の賃料が入り、とくに困りごとがなければ、現状を疑う機会はありません。しかし、変化は着実に進んでいます。気づかないうちに、当初描いていた計画とのずれが大きくなっていることもあります。
だからこそ、大きな問題が起きていない今のうちに、落ち着いて棚卸しをしておくことに意味があります。切羽詰まってからでは、選べる選択肢が限られてしまうこともあります。余裕のあるうちに現状を把握し、方向性を考えておくことが、後の安心につながります。まずは、税務の観点から現状を税理士に整理してもらい、承継や契約に関わる論点を弁護士に確認しておくと、見直しの土台ができます。
長期保有で変わっていること(現状の棚卸し)
① 税務・建物・収益・自分の状況が変化している
② それぞれを分けて確認すると整理しやすい
まずは、長期保有によって何が変わっているのかを、いくつかの側面に分けて確認しましょう。漠然と「古くなった」と捉えるのではなく、項目ごとに見ていくと、現状がはっきりします。
| 側面 | 起きている変化の例 |
|---|---|
| 税務 | 減価償却の進行、所有期間の区分の変化 |
| 建物・設備 | 経年による傷み、修繕や更新の必要性 |
| 収益・賃貸 | 賃料水準やテナントの状況の変化 |
| 自分・家族 | 年齢、健康、家族構成、承継の考え |
このように、変化は一つの側面にとどまりません。税務、建物、収益、そして自分や家族の状況が、それぞれに動いています。これらが絡み合って、今の状況をつくっています。次の項目から、とくに長期保有で意識したい税務・建物・収益の変化を順に見ていきます。まずはこの棚卸しを、税理士や建物の専門家の力も借りながら進めておくと、判断の材料がそろいます。
税務面の変化(減価償却と所有期間)
① 減価償却の進行が売却時の税額に関わるとされる
② 長期保有は所有期間の区分に影響するとされる
長期保有で、まず意識しておきたいのが税務面の変化です。事業に使ってきた建物は、その価値が年々目減りするものとして扱われるとされます。これは減価償却と呼ばれる考え方で、長く保有するほど、その積み重ねが大きくなっていくとされます。この積み重ねは、いざ売却するとなった際の売却益の計算に関わってくるとされます。
一般的に、売却益は「売った金額」から「取得にかかった費用」などを差し引いて求めるとされますが、長期保有の物件では、減価償却の進行によってこの取得費の考え方が変わり、結果として売却益が大きく見えることもあるとされます。長く持ってきたからこそ、売却時の税務が住宅とは異なる様相を帯びる、ということです。
また、所有していた期間の長さは、売却益にかかる税率の区分にも関わるとされます。一般的に、長く保有した物件は、税率の面で有利な区分になりやすいとされます。20年以上の保有であれば、この点では有利に働く可能性がある一方、減価償却の影響とあわせて総合的に見る必要があります。こうした税務は専門的なため、自分の物件で今売却するとどうなるかは、税理士に確認しておくことをおすすめします。長く保有してきた物件ほど、税率の区分と減価償却の進行という二つの要素が同時に効いてくるため、片方だけを見て「有利」「不利」と判断するのは危ういといえます。両方を織り込んだ試算をしてはじめて、今売る場合の税負担の全体像が見えてきます。
建物・設備の経年という現実
① 建物や設備は着実に更新の時期を迎える
② 今後の修繕負担を見通しておきたい
20年以上が経てば、建物や設備は着実に年を重ねています。これまで大きな修繕をせずに済んできたとしても、この先も同じとは限りません。給排水や空調、電気といった設備は、いずれ更新の時期を迎えます。外壁や防水といった建物本体に関わる部分も、経年による対応が必要になることがあります。
こうした修繕や更新には、まとまった費用がかかることがあります。持ち続けるのであれば、この先どのような修繕が、いつごろ、どのくらいの規模で必要になりそうかを、あらかじめ見通しておくことが大切です。予期せぬ大きな出費に慌てないためにも、建物の現状を把握しておく価値があります。
建物や設備の状態は、持ち続けるか手放すかの判断にも関わります。今後の修繕負担が重くなりそうであれば、それも含めて保有を続けるコストを考える必要があります。建物の状態や修繕の要否は建築士に、設備の状態は設備業者に確認しておくと、客観的な見通しが立てられます。修繕費の税務上の扱いや、保有と売却の手取り比較は税理士に相談しておくとよいでしょう。とくに、大規模な修繕が近づいている物件では、その費用を負担してから持ち続けるのか、修繕の前に手放すのかという判断が現実的な論点になります。修繕の時期と規模を早めに把握しておくことが、こうした判断を落ち着いて下すための土台になります。
収益力と賃貸状況の変化を見る
① 当初と今とで賃料や需要が変わっていることがある
② 収益力は保有継続の判断材料になる
長く保有してきた物件では、収益の状況も当初とは変わっていることがあります。取得した当時に見込んでいた賃料や稼働と、今の実態とを、あらためて照らし合わせてみましょう。安定して埋まっていると思っていても、賃料の水準が周辺と比べてどうなのか、テナントの状況はどうかを、冷静に確認する価値があります。
周辺の環境が変われば、その物件が持つ収益力も変わります。人の流れや商業の状況が変化すれば、店舗としての需要にも影響します。長く保有してきたからこそ、当初の感覚のまま「良い物件だ」と捉え続けていることもありますが、今の目で見直すことが大切です。
こうした収益力の現状は、持ち続けるかどうかの判断に直結します。安定した収益が続く見込みであれば保有を続ける意味がありますし、収益力が落ちてきているなら別の選択も視野に入ります。今の収益状況の評価や、周辺の市場動向は業者に、その状況が税務や手取りにどう関わるかは税理士に相談しながら見極めるとよいでしょう。長く保有していると、当初の取得価格を基準に「これだけの賃料が入っているのだから十分」と感じがちですが、大切なのは今の物件価値に照らして収益力が見合っているかどうかです。視点を今に切り替えて評価し直すことが、これからの判断を確かなものにします。
持ち続ける・売却する・承継するの見直し
① 3つの選択肢を今の状況に照らして考える
② それぞれに税務・法務の論点がある
現状を棚卸ししたら、次は方向性です。長期保有のオーナーが今考えたい選択肢は、大きく3つに分けられます。持ち続ける、売却する、次の世代へ承継する。それぞれを、今の状況に照らして見直してみましょう。
安定した収益が見込め、修繕負担も許容できるなら、保有を続ける選択です。今後の負担を見通しておくことが前提になります。
収益力の低下や修繕負担、資金の必要性などから、手放す選択です。長期保有ゆえの税務を含め、手取りの試算が欠かせません。
次の世代へ引き継ぐ選択です。生前の対応か相続を待つかで論点が変わり、早めの検討が役立ちます。
どの選択が適しているかは、棚卸しで見えてきた現状によって変わります。そして、いずれの選択にも、税務と法務の論点が伴います。売却なら手取りの試算、承継なら贈与や相続をめぐる論点、保有継続なら今後の負担の見通しです。売却や承継に伴う税務は税理士に、承継の方法や契約・権利に関わる部分は弁護士に相談しながら、今の状況に合った方向を選んでいくことが大切です。一つに絞りきれない場合でも、専門家とともに論点を整理しておくだけで、いざというときの動きが変わります。
【税務・法務に関する専門家相談のご案内】
● 税理士(不動産投資専門)
長期保有による減価償却の進行と売却時の税額、所有期間による税率の区分、保有と売却の手取り比較、承継に伴う贈与や相続の税務、修繕費の扱いなど、長期保有のオーナーが直面する税務は税理士の専門領域です。現状の棚卸しから方向性の検討まで、幅広く役立ちます。
● 弁護士(不動産・事業用)
承継の進め方、遺言や生前贈与に関わる論点、賃貸借契約の見直し、売却時の権利関係の整理、相続人間の調整など、承継や契約に関わる論点は弁護士への相談が有効です。早めの相談が、将来のトラブル予防につながります。
● 建築士
建物の状態や遵法性、今後必要になる修繕の見通しを確認できると、持ち続けるか手放すかの判断材料になります。長期保有の物件では、客観的な現状把握が役立ちます。
● 設備業者
給排水・空調・電気などの設備の状態や、更新時期の見通しの確認では、設備業者の協力が役立ちます。今後の修繕負担を見積もる材料になります。
よくある質問(FAQ)
まとめ
① 20年の節目は現状を棚卸しする好機
② 税務・建物・収益・家族の変化を確認する
③ 持ち続ける・売却・承継を専門家と見直す
区分店舗を20年以上保有してきたということは、それだけ底力のある物件だったともいえます。しかし、長い時間は、物件にもオーナー自身にも、静かに変化を積み重ねています。大きな問題が起きていない今だからこそ、落ち着いて現状を棚卸しし、これからを考える価値があります。
棚卸しでは、減価償却の進行や所有期間といった税務面、建物や設備の経年、収益力や賃貸状況の変化、そして自分や家族の状況という、複数の側面を確認します。これらが絡み合って、今の状況をつくっています。項目ごとに分けて見ることで、現状がはっきりしてきます。
そのうえで、持ち続ける・売却する・承継するという3つの選択肢を、今の状況に照らして見直します。いずれにも税務と法務の論点が伴うため、税務は税理士に、承継や契約は弁護士に相談しながら考えることが大切です。今すぐ結論を出す必要はありませんが、余裕のあるうちに論点を整理しておくことが、後の安心につながります。長く大切にしてきた物件だからこそ、その先の道筋を、納得のいく形で描いておきたいものです。本記事を全体像の把握に役立てつつ、具体的な判断は税理士・弁護士とともに進めていきましょう。
── ご相談はこちら ──
事業用不動産の売却、まずはご相談ください
区分店舗・区分事務所・事業用区分マンション・店舗付き住宅・築古ビルなど、事業用不動産の売却をお考えの方はLINEからお気軽にご相談ください。
SUNNY SIDE LIFE
事業用不動産専門メディア
事業用不動産に特化した情報メディアです。実務経験と一般的に公開されている情報をふまえ、取得・融資・運用・売却までの情報などを発信しています。
【重要】当サイトご利用にあたっての注意事項
■ 情報の位置づけについて
本サイトに掲載されている記事は、一般的な参考情報として作成・提供されています。特定の個人や法人に対する専門的助言、推奨、保証を行うものではありません。
■ 読者の皆様へ
・本サイトの情報はあくまで参考材料としてご活用ください
・実際の不動産取引、投資判断、契約行為等は、必ず専門家(不動産会社、税理士、弁護士等)にご相談のうえ、ご自身の責任において行ってください
・本サイトの情報を参考にした結果生じた損害、トラブル、法的問題等について、当サイトは一切の責任を負いません
※本サイトの情報に基づく判断・行動は、すべて閲覧者ご自身の責任において行われるものとします。


